v10.0
- ID:
- [English Translated by Gengo]
31076
- 年度:
- 2014
- 月日:
- 0807
- 見出し:
- 埼玉にムーミンの世界があった!?
- 新聞名:
- 朝日新聞
- 元URL:
- http://www.asahi.com/shopping/travel/SDI201408052400.html
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 2014年は「ムーミンシリーズ」を生んだ児童文学者、トーベ・ヤンソンの生誕100周年。誕生日の8月9日は日本のファンからの要望で制定された「ムーミンの日」でもある。芸術家一家に生まれたヤンソンは若くして美術分野で頭角を現し、母国フィンランドでは文学者であると同時にビジュアルアーチストとして
評価されている。ムーミンシリーズの独特な世界観や哲学は、ヤンソンという多彩な芸術家の魅力と切り離せない。作品の多くはバルト海の孤島クルーヴハル島で執筆されており、北欧の自然の中で生まれたテーマや思想は子どもだけでなく、多くの大人をも引きつけてきた。
ヤンソンの思想に基づく自然公園
そのヤンソンの思想を日本の子供たちに伝えようという理念に基づいた自然公園が、埼玉県飯能市にある。1997年に開園した「あけぼの子どもの森公園」は森の谷間に小川が流れ、童話の世界から抜け出した、あるいは現代美術作品のように奇抜な建物が並ぶ。しかしかたわらに立つとそれが不思議なほ
ど周囲の自然環境となじみ、何百年も昔からあった古建築のようにさえ見える。広大な森林を有する飯能の地場産業「西川材」を使った木の質感や自然の造形を活かし、公園全体が自然との調和を考え抜いて設計されているからだ。しかもその建物は秘密の小部屋やのぞき窓、らせん階段、踊り場といった
仕掛けで子どもたちの想像力をくすぐる。夏休みに田舎の祖父母の家に行った日本の子供たちや、夏の別荘に到着したフィンランドの子供たちがまず最初にしたくなる「探険」。そのわくわく感が建物から周囲の自然へと広がっていく。
あけぼの子どもの森公園は飯能市が運営する入場無料の自然公園で、広告や宣伝はしていない。園内にムーミンやスナフキンがいるわけではないし、本の挿絵やアニメでなじんだあの風景を再現しているわけでもない。なのにそこには「ムーミン谷が実在したら、案外こんな雰囲気なんじゃないかな?」と思わ
せる何かがある。ファンの間で「日本のムーミン谷」とささやかれ、遠方からの入園者が少なくないのも不思議ではない。
意外と近いフィンランド
「でも、やっぱりムーミン見たいよね」という人にも朗報がある。2015年に日本国内にムーミンのテーマパークをオープンする計画が進んでいるからだ。100周年で盛り上がり過ぎて「とても来年まで待てない」というムーミンフリークはフィンランドに行こう。ムーミンやリトルミイが出迎えてくれるテーマパーク「ムーミン
ワールド」が古都トゥルク近郊にあるからだ。成田から首都ヘルシンキへは直行便で約10時間。ヘルシンキは実は日本から最も近いヨーロッパの都市のひとつなのだ。ただし出発するなら準備は今すぐだ。ムーミンワールドは基本的に夏の間しか営業していない。
日本ではあまり知られていなかったが、トーベ・ヤンソンには童話だけでなく一般向きの作品『黒と白』や孤島での生活を綴った日記的な作品『島暮らしの記録』もある。作者やその故郷フィンランドについて知ることによって、ムーミンの世界への理解がまた一段と深まるはずだ。
文 ジュラ・高橋洋
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