v10.0
- ID:
- 30171
- 年度:
- 2014
- 月日:
- 0413
- 見出し:
- ヒノキが香る酒考案 木材加工会社社長 町田喜久男さん
- 新聞名:
- 東京新聞
- 元URL:
- http://www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/20140413/CK2014041302000160.html
- 写真・動画など:
- なし
- 記事内容
- その酒は、ほんのりと木の香りがする。升で日本酒を飲む時や、木造新築住宅に足を踏み入れた時のにおいに通じる。「なかなかいいでしょう?」。飯能市で木材加工会社を経営する町田喜久男さん(69)がほほ笑む。「地元の『西川材』を多くの人に知ってほしい」と、町田さんが焼酎と西川材のヒノキをベ
ースに考案した「きこりの夢」だ。
西川材は現在の飯能・日高市、毛呂山・越生町周辺で切り出されるヒノキやスギの総称。入間川などを使って江戸に運ばれたことからその名がついた。江戸の大火や関東大震災の後には被災地再建のため大量の注文が舞い込み、建築資材の一大供給地になった。
「昭和三十年代までは、飯能の駅前はほとんど材木関係の店だった」。町田さんの父と兄も戦後、地元の名栗村(現飯能市下名栗)で製材工場を始めた。町田さんも十九歳で働きだした。
だが一九六四年に木材輸入が自由化され、大量の海外材が日本に入ってきた。国内材は売れなくなり「製材工場や市場、卸業者などが会社や店を畳んでいった」。戦後大量に植林されたスギやヒノキは間伐などの手入れが不十分になり、山も荒れてしまった。
「近年の住宅は海外材が七割を占めている。『西川材はいいですよ。使って』と言うだけでは買ってもらえない。とにかく知ってもらわなくては。ならば飲食物を香らせる方法はどうかと考えたんです」。二〇一一年ごろのことという。
最初は自宅でうどんやまんじゅうを作る際、ヒノキの香りを含ませた水を混ぜてみた。そして木片をさまざまな酒に浮かせて味わったところ、「焼酎が一番しっくりいった」。
地元の酒造会社など、いくつかの蔵元に生産してもらえるかを打診。昨年二月に越生町の麻原酒造から「やってみましょう」と快諾を得た。二百本ほど製造し、知人らに試飲を頼んだ。好評だったため、昨年三月には東日本大震災の被災地復興を支援する飯能市のイベントに出品した。口コミで評判が広が
り、一般販売を始めた。
現在は飯能市内の酒販店四店舗で売っており、西武鉄道飯能駅にある観光案内所を兼ねた売店でも近く販売される予定だ。ヒノキは木によって香りの濃淡が異なるため、大量生産できない悩みもあるが、本年度に飯能商工会議所が推奨商品に選ぶなど、地元が後押しする態勢もできた。
町田さんは「この酒を飲みながら日本の山林や林業に思いをはせてもらえればうれしいですね」と目を細めた。 (上田融)
<まちだ・きくお> 飯能市下名栗在住。2000年から「町田木材」社長。現在は飯能商工会議所常議員を務め、赤字だった地元観光釣り場の再建など地域再生にも取り組んでいる。「きこりの夢」(720ミリリットル)は1100円。「ロックで飲むのがお勧めです」。販売店舗などの問い合わせは、町田木材=
電042(979)0213=へ。
..