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- ID:
- 29470
- 年度:
- 2014
- 月日:
- 0119
- 見出し:
- 数珠の技でアクセサリー
- 新聞名:
- 読売新聞
- 元URL:
- http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/shiga/news/20140118-OYT8T01012.htm
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 仏を拝み、亡くなった人に思いを寄せる――そんな折々に手に通す木の数珠の製法を生かし、高級宝飾品を生み出している企業が、伝統の産地・近江八幡市にある。「カワサキ」は世界中から集めた高品質な色付きの木の粒を連ね、貴金属とはひと味違う柔らかな輝きを放つアクセサリーに仕立て、高級
志向の女性らをひき付けている。22日から東京ビッグサイトで開かれる「国際宝飾展」へ出展し、国内外のバイヤーらにアピールする。(西井遼)
近江八幡市の数珠づくりは、1400年前まで遡る。聖徳太子が619年、かの地に願成就寺を建立した際に近くの村人たちに作り方を伝えた、とされる。現在も約100万連の国内生産量の7割を占める。安価で技術力の差が縮まったアジアなどの外国産に押される中、カワサキはレーザー光線で一つひと
つの珠(たま)に寺院名や寺紋、仏画や経文などを彫り込んだり、ゆかりの建物の建材を珠に加工したりと、細やかな対応で需要を掘り起こしてきた。
「変革の決め手に欠ける」。川崎孝雄社長(59)が模索していた約10年前、思いがけないベテラン女性社員の一声にひらめいた。「いろんな形が作れるし、アクセサリーになるなら、私ほしいかも」
着目したのは、ベルサイユ宮殿にふんだんに使われたという「樹の宝石」。幹に緑や黄、紫、ピンク、黒などを帯びた希少な自然木は、古くから王侯貴族らを魅了する素材だったからだ。
問題は、時間と共に摩擦などで色合いが鈍ることや、ファッションセンスのあるデザインにできるかどうかだった。社員らと工夫を重ね、数年がかりで風合いを保つ特殊なコーティング方法と、珠を狙い通りにカットできるシステムを構築。外部のコンサルタントの意見も採り入れて事業計画を練り、2009年秋に「
レアウッドビーズ・アクセサリー」として経済産業省の認定事業となった。
15色の木を基調に、最小で直径4ミリの球体から、様々な多面体、さらにひねりやラインを加えられる技術力を発揮し、ネックレス、ブレスレット、ピアスなど次々と考案。物産展などに積極的に出て、消費者の声に耳を傾けた。
木特有の優しい質感と落ち着きのある華やぎがあり、幅広い年代の女性らの高級志向に訴えることを確信した川崎社長は、ターゲットを「アクセサリーとジュエリーの間」に絞る。価格帯はブレスレットで5000~4万円、ネックレスで1万数千円~十数万円、ピアスで4000円~1万数千円に置き、オリジナリテ
ィーを損なわないように200種以上をそろえる。
12年春には東京の大手百貨店に置かれ、地元でも浸透させようと、13年からは観光名所の八幡堀沿いにも「レアウッドビーズ美(び)樹(じゅ)」を開いた。
「カラフルな数珠」という当初の反応は、もう聞かれなくなった。ただ、「身に着けて安心できる」という数珠の持ち味は、受け継がれていると、川崎社長は思う。「一生大切にされるものを、という気持ちを忘れないように頑張りたい」といい、おしゃれな女性の定番アイテムにする夢を膨らませる。
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