v10.0
- ID:
- 28947
- 年度:
- 2013
- 月日:
- 1105
- 見出し:
- [見つけた新刊絵本]盆栽えほん
- 新聞名:
- 絵本のPictio
- 元URL:
- http://www.pictio.co.jp/museum/new-books/5890
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- なんと「盆栽」を題材にしたユニークな絵本です。読んであげる大人のほうが飽きません。盆栽の図鑑的な要素も含んでいて、盆栽の基礎知識に始まり、盆栽に使う植物や仕立てる形の種類、実際に作るときのやり方、さらには道具・土・肥料についての解説、作った後の楽しみ方や手入れの方法などが、詳
しく、かつ、わかりやすく書かれています。
Image 冒頭に思わず「なんと」と書いてしまったように、盆栽というと、どうしても中高年の人が楽しむ趣味というイメージがあり、作るのも手入れをするのも難しいのでは、と思っていましたが、この本を読んでみたら、そんな先入観はどこかに吹き飛んでしまいました。
出版社のサイトには、読者対象は小学校高学年とあります。でも、よくよく、考えてみれば盆栽は、理科(科学・生物)の要素と、図工(美術・工芸)の要素とが融合されており、特に扱いが難しい電動工具や薬品などを使うわけでもないので、小学生にも十分楽しめそうです。本書にも「盆栽は、植物を材料にし
て絵を描くようなもの」と書かれています。なるほど。
「盆栽」のイメージにとらわれすぎず、アサガオやヘチマを育てたことがあるなら、その発展形と考えてもいいですし、どんぐり工作や、木の葉や実を使ったクリスマスリース、あるいはジオラマ模型などの応用と捉えることもできそうです。いずれにせよこの絵本で、盆栽が、ぐっと身近に感じられるのは間違いありま
せん。
実際、この本も、生物観察や工作をテーマにした児童書のような、読みやすいスタイルで構成されています。植物に興味があるお子さんであれば、親しみながら楽しく読み進めることができるでしょうし、実際に盆栽を作ってみたくなるのではないかと思います。
とはいえ、すでに盆栽に親しんでいる人は、大人でもそう多くはないと思われますので、もう少し内容に触れておきましょう。盆栽の種類には、木を楽しむもののほかに、花や実、草を楽しむものもあります。ただ眺めて楽しむだけでなく、小さな鉢の中に四季の移ろいを感じたり、花の香りを嗅いだり、実がなれば
それをとったりと、いろいろな楽しみ方があるんですね。
ここでは、伝統的な日本の盆栽も紹介されてはいますが、それだけにこだわらず、紅葉がきれいだった秋の公園や、春の桜並木をイメージして作ったり、秋の写真集や画集をヒントにしたりと、自由に発想していいことがわかります。ミニチュアのベンチや自転車を置くアイデアなどは新鮮に感じられ、また盆栽作り
へのハードルを低くしていると思いました。近年、海外でも「Bonsai」の人気が高まっているというのも頷けます。
作者の大野八生さんは、元々は植物に携わる仕事を経て、庭を造る仕事に携わってきた人で、造園会社を退社後フリーとなり、現在はイラストレーターと造園家として活動しています。絵は、ペンと水彩を主体としたポップなタッチです。主人公に盆栽を教えてくれるおじいちゃんの、ファッションや髪と髭のカッ
トがおしゃれなのもなかなかユニークで面白いですね。
絵本といってもこのような内容ですから、索引が充実しています。大人にも、楽しく読めて実用的な絵本でした。対象年齢は、小学校の高学年からになります。
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