v10.0
- ID:
- 28715
- 年度:
- 2013
- 月日:
- 1002
- 見出し:
- 宮染め ぼかしや色み、絵を描くように
- 新聞名:
- 朝日新聞
- 元URL:
- http://www.asahi.com/and_M/fashion/TKY201310010207.html
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 宇都宮市の中心部を流れる田川沿い。高さ8メートルもの物干しから、一反(約12メートル)を二つ折りにした真っ白な綿布が風になびく。すぐ脇では、染め上がった色とりどりの反物を横につって天日干し。ここ中川染工場では、江戸時代に始まった地元の染め物「宮染め」を今に伝える。
用いる技法は注染(ちゅうせん)。まず和紙に柿渋を塗り重ねて文様を彫った型紙を生地に乗せ、へらでのりをつけていく。型紙は幅1メートルほど。生地を一反につき10~12回折り返して同じ作業を繰り返すが、文様を決してずらさないのが職人の腕の見せどころだ。
染料は、じょうろでたっぷりと注ぎ込む。裏表なく、よく染まる点が一般的なプリントと異なる。「生地に染料を押しつけないから、通気性が抜群」と中川ふみ専務(62)。最後に田川からくみ上げた水で、のりを洗い落とす。
浴衣や手ぬぐいの注文が多いが、素朴ながら深い色み、にじみの美しさは、デザイナーをも引きつける。パリや東京で自身のブランド「アライサラ」を発表してきた荒井沙羅は、10月の東京コレクションでも、宮染めを一部に用いた新作を発表する。
一昨年からは、宇都宮市職員のクールビズ用に宮染めのシャツを製作。モダンな黒白の市松文様や、宇都宮の名物をちりばめたポップな柄が好評で、昨夏と今夏は地元デパートで一般にも販売された。
5代目となる長男の友輝さん(31)は、大学1年で父が急逝し、卒業後すぐこの世界へ。「色の出し方、微妙なぼかしなど、注染には絵を描くような自由な手触りがある。素材やデザインの幅を広げたい」と意気込む。
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