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- ID:
- 28705
- 年度:
- 2013
- 月日:
- 1001
- 見出し:
- SUNDAY LIBRARY:古屋 美登里・評『盆栽/木々の私生活』アレハンドロ・サンブラ
- 新聞名:
- 毎日JP
- 元URL:
- http://mainichi.jp/feature/news/20131001org00m040007000c.html
- 写真・動画など:
- なし
- 記事内容
- 日本人にはお馴染みの盆栽が、小説の、しかもチリの作家の小説に登場すると、不思議な存在感が生まれます。「盆栽」には作家志望のフリオとその恋人との出会いと別れ、別れた後のふたりの人生が断片的に、そして盆栽を介して詩的に描かれていきますが、その女性がすでに死んでいることが冒頭で読
者に知らされます。決定された死に向かって物語が進む構造と、緊迫感溢れる描き方と言葉が稀に見る美しさを漂わせています。過去、現在、未来が交錯する様子はプルーストの『失われた時を求めて』を彷彿させ、その本が作品中では、読み終わらずに開かれたままになっているのが暗示的です。
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