夜、植物は何もしていないと思うかもしれない。しかし植物は、光合成ができない夜の間にエネルギーを消費し尽くさないために、高度な計算を行っているというのだ。
TEXT BY ANNA LISA BONFRANCESCHI
TRANSLATION BY TAKESHI OTOSHI
WIRED NEWS (ITALIA)
Green Roof Garden photo from Shutterstock
太陽が沈むと、活動を日光に依存している植物には、ほとんどすることがなくなる。しかし暗闇の中で過ごす時間も、植物は完全に活動を停止するわけではない。むしろ驚くべき計算能力を発揮して、日中蓄えたエネルギーの消費を調整している。そして朝、太陽が出てくるまで、蓄えが尽きないように計算してい
るというのだ。これを指摘しているのが、イギリスのJohn Innes Centreの研究者たちの行った研究で、「eLife」で発表される予定だ。
植物は、光合成によって太陽エネルギーを利用して、二酸化炭素と水を炭水化物に転換させている。しかし夜、光が利用できないときは、植物は成長のために蓄積されたエネルギーの蓄えに依存している。そしてこうした蓄えは、植物が新しいエネルギーの蓄えを生産できるようになるときまで、尽きないようにし
なくてはならない。
朝までにエネルギーが欠乏しないように、またデンプンの蓄えを余らせて無駄にならないように、植物は利用できるエネルギーの量と、夜明けの到来(植物が一種の体内生体時計から得る情報だ)まで暗闇の中で過ごさなければならない時間の見積もりを行っている。
これが、研究者たちが論文で論じている高度な計算だ。彼らはシロイヌナズナの新陳代謝の様子を観察した。これは割り算にほかならず、デンプンの量と時間に関連するさまざまな分子を評価することを通じて行われている(実際にはデンプンの蓄えの量を、暗闇の中で過ごす時間の長さで割っている)。
このような方法で植物はタンパク質の消費率を決定している。こうして植物は、蓄えのほとんどすべてを消費して、夜間の成長を不必要に損なうことなしに朝を迎えることが可能になるのだ。論文の著者たちが説明しているように、これは非常に厳密な計算で、植物はデンプンや夜の長さの変化に対応して、数値
を変更することができる。
「計算を実行する能力は、植物の成長とその生産性にとって重要です」と、研究の著者のひとり、アリソン・スミスは説明した。「植物が暗闇の中でどのように成長し続けるかを理解することは、耕作の効率を上げるための新しい手法を発展させるのに役立つかもしれません」。