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- ID:
- 27556
- 年度:
- 2013
- 月日:
- 0502
- 見出し:
- 研究の現場から:樹木のDNA分析 /四国
- 新聞名:
- 毎日新聞
- 元URL:
- http://mainichi.jp/area/kochi/news/20130501ddlk39040658000c.html
- 写真・動画など:
- なし
- 記事内容
- 樹木の親子関係が分かり、系統や品種が鑑定できる。愛媛県林業研究センター(同県久万高原町)の主任研究員、西原寿明さん(45)は樹木をDNA(デオキシリボ核酸)分析することで、丈夫な樹木を後世に残そうと研究を続けている。
DNAは遺伝子の本体として生命活動の基盤となる化学物質。DNAの二重らせん構造の鎖の間には、4種の塩基が結合した階段が一定間隔で並ぶ。4種のうちアデニン(A)とチミン(T)、グアニン(G)とシトシン(C)がそれぞれ対になる。この塩基配列を基にした遺伝子解析は犯罪捜査や親子鑑定だけでな
く、植物の分析にも活用される。
西原さんは主に林業振興の立場からスギやヒノキの育種にDNA分析を役立てている。まっすぐ伸びて強度があり、病害虫に侵されにくい木は遺伝のおかげだからだ。
分析作業としては葉の部分を氷点下180度前後の液体窒素で粉末にして界面活性剤に溶かし、溶媒を加えて遠心分離するとDNAが抽出できる。遺伝情報を持つDNAには制限酵素というハサミによって切れる部分と切れない部分があり、切れる場合はその切れ方に違いがある。透明なゼリー状の「ゲル
」にDNAを入れ、電気泳動させることでDNA断片を長さによって分離することができる。膨大なDNAの塩基配列のうち、特定の位置(遺伝子座)別にDNAを分析。八つの遺伝子座を組み合わせることで80%の識別率に達するという。
同センターはこれまで、スギやヒノキの個体識別、サクラの系統分析などにDNA分析を役立ててきた。「将来は花粉症を引き起こさない無花粉スギや、マツクイムシに抵抗性を持つマツを育種することにも応用が期待されます」。林業振興につながるDNA分析に、西原さんは意欲を注ぎ続ける。
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