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- ID:
- 27107
- 年度:
- 2013
- 月日:
- 0313
- 見出し:
- 復活の薪プロジェクトとともに三陸の豊かな海を取り戻す
- 新聞名:
- アドタイ
- 元URL:
- http://www.advertimes.com/20130312/article104457/
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 資源は誰のものか(3)―『環境会議』2013年春号より
取材協力
芳賀 正彦 NPO法人吉里吉里国理事長
震災復興の中で、木質バイオマスを活用し、循環型社会の確立と生活再建とを同時に進めようという取り組みがある。岩手県大槌町のNPO法人「吉里吉里国」は、2011年10月から、地域の山林を再生し、そこから出る間伐材を薪にして地域のエネルギー源として供給することで、生活の糧を得ようという活動
を始めた。そのキッカケは、「復活の薪プロジェクト」だった。
東日本大震災の津波で大きな被害を受けた大槌町では、多くの人が、家族や家、職場を失った。悲しみと先の見えない不安を抱え避難所で暮らしていた人たちが、将来に向けて歩き出そうと、津波で発生した大量のがれきのなかから建築廃材を集め、「復活の薪」として販売したのがこのプロジェクトだった。避
難所で生活していた有志12人が任意団体を作り、2011年5月から活動を開始すると、全国から注文が寄せられ、5カ月ほどで10kg入りの薪5000袋を販売することができた。彼らが、次の手立てとして注目したのが地域の山林だった。
林内作業車。吉里吉里国のメンバーが林業の技術を習得した後、山林を所有する漁師にその技術を伝えていく。
木材の伐採。漁師が副業で自伐林業を営むことができれば、生活の安定につながるうえ、自然環境の改善にもつながる。
豊かな森林が豊かな海をつくる
大槌町のある三陸は、豊かな海で知られるが、実は山も多い。その山林のほとんどは、地元の漁師が所有する里山人工林だが、他の地域同様、ここ40年ほどは手入れをしていないため、荒れ放題になっている。この山林を漁の合間に漁師自身が管理できれば、副業として生計の足しになる。しかも、豊かな
里山が戻れば、その山からの水が流れ込む海も豊かになる。さらに、山林から搬出される間伐材を薪にすれば、エネルギー供給の一助にもなる。そう考えたメンバーは、これを長期的な活動にするため、同年12月に「復活の薪プロジェクト」のリーダー、芳賀正彦氏を理事長に、NPO法人化し、新たなスタート
を切った。
林業に必要なチェーンソーや林内作業車、木材を搬出する軽架線集材機などの機械類は、義援金や助成金、寄付金などで調達した。また、作業をするために必要な技術は、林業経験者である芳賀氏や小規模自伐林家の育成の旗振り役である「土佐の森・救援隊」の支援などを受けて、メンバーが習得
を進めている。
芳賀氏によれば、豊かな里山を作るためには、生えている木の半分は間伐しなければならないという。また、間伐した木材のうち住宅用の木材として販売できるのは3~4割なので、残りの6~7割の有効利用が課題になる。「吉里吉里国」では、これを木工製品の材料にするほか、薪にして、地元の旅館や漁
師の番屋、農家のビニールハウス用のボイラーの燃料として販売している。その需要は多く、現在では、需要に供給が追いついていない状況だという。また、薪利用を促進するために、釜石市にあるペレットストーブのメーカーと共同で、丸太を使った薪ボイラーの開発も進めている。
林業は百年先を見据えた恩送り産業
現在、「吉里吉里国」の活動は、芳賀氏所有の森林で技術を習得しながら間伐などの作業を進めているところだが、技術を習得したあかつきには、その技術を伝授して自伐できる漁師を増やすほか、自身で山林の管理が無理な人からは「吉里吉里国」が受託して管理していく方針だ。
芳賀氏によれば、すでに、「うちの山を見て欲しい」と依頼されることも多く、これから5年先くらいまで仕事がいっぱいの状況だという。
「一日中家にいたら、明日の不安や心配で愚痴しか出てきません。でも、山に入って汗を流している昼間はそうしたことを忘れます。だからこの活動は、安心感を回復させるための活動でもあるのです。この活動の最終目標はきれいな山と海を取り戻すこと。自分たちが働くことで、誰かの役に立っていると思える
と、誇りを持って働けます。農業は、自分が春に播いたものを秋に自分で刈り取りますが、林業では、50年前の人たちが植えたものを我々が生活の糧にし、そして我々が今植えているものは、50年先の子や孫の生活を支えます。つまり林業というのは、『恩送り』をしながら、継承していく産業なんです。50
年、100年先に三陸の海がトドやアザラシ、オットセイでいっぱいになることを願って今、山を再生するんです」(芳賀氏談)震災の復興同様、吉里吉里国の挑戦は始まったばかりだが、その眼は三陸の未来を見据えている。
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