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- ID:
- 33843
- 年度:
- 2015
- 月日:
- 0905
- 見出し:
- <風評と闘う福島>顧客信じ製品を工夫
- 新聞名:
- 河北新報
- 元URL:
- http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201509/20150906_63015.html
- 写真・動画など:
- なし
- 記事内容
- ◎原発事故の現場(下)反転攻勢
<米進出に活路>
東京電力福島第1原発事故による逆風は、木製品や農産加工品にも及んだ。
福島産木材などを使った製品をホームセンター向けに製造・販売する「光大産業」(本宮市)は事故から半年が過ぎたころ、深刻な風評被害に直面する。
「安全かどうか証明書を出せ」「健康被害が出たらどうする」。苦情とも嫌がらせともつかない電話が連日、かかってきた。女性事務員2人がうつ病にかかり退職するほど執拗(しつよう)だった。
クレームが取引先まで及んだのか、納品が打ち切られるケースが出始め、売り上げは20%減った。「説明を尽くしても理解してくれない人はいる」。根本昌明社長(58)は影響が長引くことを覚悟した。
異業種交流会で輸出対象の支援制度を知り、海外進出を計画。米国での商談会に足を運んだ。試行錯誤を続け、国産ヒノキ材を用いた高級まな板の販売先を見つけた。日本人バイヤーの目に留まり、国内での取引先開拓にもつながった。
<納品先を開拓>
学校給食や病院向けのゼリーやアイスを製造していた福島市の「トーニチ」も原発事故半年後の秋、激しい風評被害にさらされた。「福島というだけで土俵に上がれなかった」。岸秀年社長(67)は振り返る。
「福島産の果物を使ったものは給食に使えない」「パッケージの『福島』の表示を外してほしい」。検査で安全性は証明されているのに、取引中止の知らせが次々と届いた。
岸社長は攻めに出た。営業担当者を4人から6人に増やし、大手問屋に任せ切りだった納品先や小さな問屋を回らせた。小規模な注文にも応じ、需要を掘り起こした。
商品の幅を広げようと、ケーキなど焼き菓子製造も始めた。社員を東京のパティシエの元で修業させ、手作りに近い味を追究。今秋には焼き菓子用の新工場建設に取りかかる。「ピンチがチャンスになった。いつかは直販店も開きたい」と岸社長は話す。
<地元産前面に>
取引価格が他産地と比べ2割安という県産木材に対する風評被害が残る中、いわき市の割り箸メーカー「磐城高箸」は地元産を前面に押し出した製品を売る。
間伐材の活用を目指した高橋正行社長(41)が2010年8月に創業。製造を始めた直後の11年4月、東日本大震災の余震で設備が大破した。デザイナーグループの支援を受け、最低でも1膳50円という高級路線への転換を目指した。
「冷静な人は風評に惑わされない。きちんと製品を作り、メッセージが伝わるようデザインやパッケージを工夫すれば売れる」。東北の被災3県のスギ材を原料にしたセットを販売。販促品や記念品などへの営業を続ける。
「風評を嘆く人は攻め方を間違えている。福島産を敬遠する『売りにくい客』と、そうではない『売りやすい客』がいるだけ。買ってくれる人はいる」。高橋社長は信じている。
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