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- ID:
- 33152
- 年度:
- 2015
- 月日:
- 0527
- 見出し:
- 日本製紙、脱「紙頼み」鮮明 新中計で化学・エネに重点
- 新聞名:
- 日本経済新聞
- 元URL:
- http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ26HWT_W5A520C1TI1000/
- 写真・動画など:
- なし
- 記事内容
- 日本製紙は26日、2015年度から3カ年の中期経営計画を発表した。印刷用紙で国内シェア首位の同社だが、次代の成長を託すのは紙ではなく、「木材を活用した新分野」(馬城文雄社長)だ。木材繊維由来の軽くて強い新素材やバイオマス(生物資源)発電など「紙以外」の化学、エネルギー分野などに投
資のほぼ半分をつぎ込む。
「17年度の営業利益500億円は必ず達成する」。同日、都内で開いたアナリスト向け経営説明会で馬城社長は語気を強めた。14年度の営業利益は236億円とライバルの王子ホールディングス(HD)の半分程度。電子媒体の台頭などによる主力の洋紙・板紙事業が伸び悩むなか、新たな成長エンジンが
必要だ。
新中期計画では3カ年の総投資枠を2800億円に設定。化学やエネルギーなどの成長分野に1270億円を充てる。国内外の化学メーカーなどを対象にM&A(合併・買収)も進める構えだ。12~14年度の中期計画でも「戦略投資枠」を設けたが700億円で全体の3割弱だった。
「セルロースナノファイバー(CNF)」。触媒を使った特殊な化学処理で木材のパルプ繊維を解きほぐした超極細の繊維状物質だ。日本製紙は今秋、この新素材の実用化に踏み出す。岩国工場(山口県)の製造設備で実証を重ねてきた。
まず大人用紙おむつの消臭シートに使う。繊維表面に銀など金属イオンが付着しやすく、消臭効果は従来の数倍という。
だがCNFの本当のすごさは、重さは鉄の5分の1で強度は5倍以上という、自動車や航空機向けで脚光を浴びている炭素繊維ばりの性能だ。CNFは将来1兆円市場に拡大するとの予想もある。政府が昨年策定した「日本再興戦略」の改訂版にもCNFの研究開発の促進が盛り込まれた。
「世界に先駆けて実用化することで先行者利益を獲得できる」(河崎雅行・CNF事業推進室長)との判断で、自社で活用できる紙おむつから始める。そこには王子HDなどCNF研究を手掛けるライバルの機先を制したいとの思いがにじむ。
バイオマス燃料でも木にまつわるひと味違う技術を磨いている。低温で木材を「半炭化」させることで高い熱量を維持し、石炭と混ぜて発電燃料として使いやすくする。環境に優しく付加価値が高い電気をつくれる。
6月に八代工場(熊本県)でバイオマス発電所を稼働させるほか、石巻工場にも石炭と木材を混焼する発電所を建設する。エネルギー事業の現在の売上高は150億円だが、早期に500億円規模に拡大させる。
もっともアジアなど海外市場開拓という課題もある。14年度に13%の海外売上比率を17年度に20%にする計画だ。だが、10年に結んだ中国の段ボール原紙メーカー、理文造紙との資本業務提携を4月に解消するなど、もたつき気味だ。
26日の日本製紙株は一時2222円まで上がり、年初来高値を更新した。円安による原料輸入コスト上昇など逆風が吹くなかでも、中期計画が好感された形だ。新事業を実らせて経営の支柱にできるか。「紙頼み」からの脱却はそこに懸かっている。(
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