v10.0
- ID:
- 32707
- 年度:
- 2015
- 月日:
- 0317
- 見出し:
- 桜の撮り方 2015、夜桜撮影を成功させるポイント
- 新聞名:
- 夕刊アメーバニュース
- 元URL:
- http://yukan-news.ameba.jp/20150317-65/
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 日没20分後に訪れる最初のシャッターチャンス
春を感じる満開の桜を撮るために、早咲きの名所である静岡県河津町にやって来た。用意したカメラは薄型軽量ボディの高級コンパクト機、キヤノン「PowerShot G7
X」だ。手持ちによる気軽なスナップから、テクニックを駆使した本格撮影まで幅広く対応できるカメラである。今回はさまざまな桜写真の中でも、スマホでは撮るのが難しい「夜桜」に挑戦してみよう。
ライトアップによって夜でも華やぐ桜スポットは全国各地にあるが、ここ静岡県河津町もそのひとつ。毎年2月から3月初旬にかけて開催される「河津桜まつり」の期間中は、川沿いの並木を中心にライトアップが行われ、昼間とは違った妖艶な雰囲気の河津桜を楽しめる。
そんな夜桜を美しく撮るには、なるべく日が暮れる前に撮影場所を下見しておきたいところ。明るいうちに構図やアングルをある程度決めておけば、電柱など余計なものが写り込んでしまう、といった失敗を防げるだろう。
夜桜の最初のシャッターチャンスは日没から20~30分後に訪れる。太陽の光がわずかに残り、空の色が青っぽく写る時間帯だ。完全に暗くなった夜空では、夜桜は力強く、落ち着いた印象になるが、それ以前の青みのある夜空では、より優しく華やかなイメージになりやすい。ひとまず夕食はお預けにして、こ
の時間帯を逃さず撮るようにしたい。
○機動性重視の手持ち撮影と画質優先の三脚撮影
夜桜撮影には、大きく分けて2つのパターンがある。ひとつはフットワークを優先し、高感度を利用して手持ちで撮る方法。もうひとつは、画質をより重視して感度を高めず、カメラを三脚に固定してじっくりと撮る方法だ。
手持ち撮影の場合、感度の設定はオート、または手動でISO800以上にセットする。こうすれば、強いライトで照らされた桜なら、手ブレせずに撮ることが可能だ。ストロボはオフにしよう。
PowerShot G7 Xは、レンズの開放値がワイド側F1.8、テレ側F2.8と非常に明るいので、暗所でも比較的速いシャッター速度が使えるメリットがある。もちろん強力な光学手ブレ補正機構も備えている。さらに、1.0型という大型センサーを搭載し、映像エンジン「DIGIC
6」によって高感度ノイズを低減。まさに夜桜撮影にうってつけの性能といっていい。
下の写真は、1/8秒の低速シャッターを使って手持ちで撮影したもの。ピントを合わせた部分をディテールまでシャープに写すことができた。感度はISO800を選んだが、高感度ノイズはまったく気にならない。
一方、三脚を使って撮る際のカメラ設定は、感度を低く、ストロボを発光禁止に、シャッター速度を4秒よりも遅くセットすること。そして、シャッターボタンを押す力によるブレを防ぐため、セルフタイマーを使ってシャッターを切ろう。PowerShot G7 Xは小型軽量なので、三脚もコンパクトタイプのもので十分といえる。
上の写真は、マニュアル露出モードを選び、絞りをF5.6に、シャッター速度を15秒に、感度をISO200に設定して撮影したもの。低速シャッターを使うことで川の流れをなめらかに見せ、光の反射をいっそう際立たせている。
PowerShot G7
Xは、最長250秒~最速1/2000秒という幅広いシャッター速度を選べることが魅力のひとつ。レンズ一体型のコンパクトカメラでありながら、さまざまなシーンに対応できる自由度がある。マニュアル露出モードやシャッター優先AEモードを選んだ場合、レンズ部のリング回転によってシャッター速度を素早く変更でき
るのも便利だ。
●光と影を意識してバランスのいい構図を狙う
構図については、光と影が作るコントラストを意識しながら、被写体の形を見極めることが大切だ。夜桜を見ると、どうしても鮮やかな色彩と輝きに目を奪われがちになる。だが、そのとき少し冷静になって、風景の全体と桜のシルエットをしっかりと見て、主役となる桜の木を画面上でバランスよく配置するように心
がけたい。
下の写真では、画面の上1/3に漆黒の夜空を、下1/3に明るく輝く川面を配置し、その間にあるライトアップされた桜並木をはさみこむような構図を狙ってみた。もっとズームアップして桜のみを大きく写すことも可能だが、ここではあえて上下に空間を設けて整然とした雰囲気を強調している。
さらに次の写真は、下から上へ放射状に伸びる画面左の木を主役にしつつ、夜空や手摺りを写し込むことで、見る人の視線を左上から右下へと誘導するように画面を構成した例だ。そのうえで、桜を眺める人の後ろ姿を点景として配置した。
見栄えのいい桜には昼夜を問わず人が集まるため、どうしても画面に歩行者や見学者が写ってしまうことがある。そんなときは無理に避けようとせず、このように人の姿を構図のアクセントとして利用するのも有効だろう。
○夜桜とループ橋、そして満天の星空を組み合わせる
川沿いのライトアップをひとしきり撮影した後は、河津桜まつりの別会場でもある湯ヶ野・七滝温泉地区まで足を伸ばした。といっても、温泉につかって一杯というのはまだ早い。ここでの目当ては、山中にそびえ立つ巨大建造物「河津七滝ループ橋」である。
このループ橋は建造物マニアにはお馴染みのもの。ぐるぐると渦巻く橋の根元には河津桜の木があり、自然と人工物の絶妙なマッチングが絵になる、隠れた桜の撮影スポットでもあるのだ。
PowerShot G7 Xを三脚にセットし、レンズを上に向けて、桜ごしにループ橋の滑らかな曲線を捉えてみた。感度はISO400に、シャッター速度は30秒に設定。小さく見える星の輝きまで、きっちりと撮ることができた。
さらに、PowerShot G7 Xに搭載されたユニークな撮影機能、シーンモードの「星空軌跡」も活用してみた。このモードを選んでシャッターボタンを押すと、低速シャッターによる撮影が一定間隔で連続的に行われ、同時にその撮影データがカメラ内で合成され、星の動きが1枚の写真上に光跡として記録される。
一般的な長時間露光による星の撮影では、空に露出を合わせるとライトアップされた建物や夜桜は露出オーバーで写ってしまうことが多い。だが、この星空軌跡モードでは、カメラまかせの設定で明るい部分と暗い星空の両方が最適な露出に仕上がる。
しかも、インターバル撮影と画像合成の進行状況はリアルタイムで液晶表示されるので、撮影途中で構図のミスに気づいてもすぐに撮り直しが可能だ。誰でも手軽に星の光跡写真が撮れる、とても便利な機能といえる。以下は星空軌跡モードを使って、30秒×10回=5分間撮影した写真だ。
これにて本日の撮影は完了。ミッションを無事遂行し、同行の編集者とともに、ようやくビールと食事にありつくことができた。狙いどおりの写真が撮れたあとの一杯は格別である。今回の撮影でもPowerShot G7 Xが大活躍してくれた。
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