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- ID:
- 32128
- 年度:
- 2014
- 月日:
- 0103
- 見出し:
- 【年間キャンペーン 脱人口減少~とかちの未来】道内ルポ(1)最少の人口 音威子府村(上川)
- 新聞名:
- 十勝毎日新聞
- 元URL:
- http://www.tokachi.co.jp/feature/201501/20150103-0020062.php
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 2015年の本紙年間キャンペーン「脱・人口減少-とかちの未来」の第1部は「道内リポート、人口減少とは何か」とし、道内でも深刻化しつつある事例を中心に、人口減少が北海道、十勝に及ぼす影響を考えていく。
木工作品の製作体験ができる村立施設「木遊館」。地域おこし協力員が将来を夢見て作品の試作に取り組む
上川地方の北端に位置する音威子府村。人口800人(昨年11月末現在)しかいない道内最少の自治体だ。
村立高校があるため、10代の村内人口は155人に上るが、20代は56人にとどまる。若者が定着しない上に出生数も少なく、0~9歳の人口はわずか27人。人口減少の悪循環が続いている。
小さな地域に魅力を感じる
「働く場所がこの村には少ない。協力隊という雇用がなければ暮らせなかった」
千歳市出身の森勇気さん(24)は、都市部から人材確保する村の「地域おこし協力隊」として働く3年目の冬を迎えた。
森さんら協力隊3人の仕事は、村立の木材加工施設「木遊館」の訪問客への製作指導、村のイベント企画・運営など幅広い。その合間を縫って、同館で木製カップの試作に取りかかる。
森さんは村立「おといねっぷ美術工芸高校」で木工を学んだ。同校での3年間の寮生活を経て、村の環境や小さなコミュニティーに魅力を感じた。「高校と村の距離を縮めたい」と卒業生の作品展や制作合宿の企画に力を入れる。
森林が8割を占める村は「森と匠の村」を掲げ、1983年に道立定時制高校を木材工芸や美術を学べる全日制の村立高校に変え、生き残りを図った。1学年の定員は40人だが、定員を超える志願者数が定着した。全寮制で道内外から集まった約120人の生徒は村民となる。10代の人口が60代(12
1人)よりも多い理由はここにある。
木工を仕事に…食べていけない
生徒は村のイベントにも顔を出して盛り上げる。「地方交付税の算定基準に人口が加味され、村の財政に貢献している」(村総務課の宗原均地域振興室長)。小さな村にとって村立高校の存在は大きい。
だが、卒業生はさらに美術や工芸を学ぶため、村を離れて進学する生徒がほとんど。森さんの同級生で村に残った人はいない。森さんと同じ年齢の村民も他に1人だけだ。
働く場が村内に少ないのも卒業生が村を離れる要因だ。木材工芸を事業化したケースもあるが、若者の雇用を生み出すまでには至っていない。「木工を仕事に生かしたいが、それだけでは食べていけない」と森さん。協力隊として最終年を迎えた今も、村内の雇用環境は変わらない。
「将来は村民が集まる工房を作るのが夢」。協力隊の渡辺瑞生さん(21)=愛媛県出身=は勤務を終える今年、隣の美深町で工房アシスタントとして働く予定だ。「元手や経営など経験が足りない。今は一度外に出て頑張りたい」
国の地方創生「今年が勝負」
村は、村立診療所や歯科医院、福祉センターなど公共施設の充実、医療費を中学生まで無料にする制度により、子育てしやすい環境を整える。
さらに国の地方創生戦略に合わせ、牧草によるバイオガスプラント建設など雇用創出を図る。若手農家が栽培して地元の食堂で提供を始めたソバの販路拡大、同村産の木を材料に、同校の卒業生が木工作品の製作・販売する仕組みなどを実現させ、雇用創出を図りたい考えだ。
宗原室長は「1人でも2人でも村で暮らす若者を増やしていければ。新年度は村にとって勝負の年だ」と話している。
【音威子府村】
旭川市と稚内市との中間に位置。かつては宗谷本線と旧国鉄天北線の分岐点で多くの鉄道関係者が働く「鉄道のまち」だった。人口のピークは1954年の4264人。農林業従事者が50人で就業人口の1割。主要作物はソバ。
深刻な「支える世代」の減少
十勝も東部・北部で厳しく
音威子府村では、若年人口の減少が顕著で、将来の村を支える人口不足に直面している。1980年と2010年の国勢調査を比較すると、この30年間で0~14歳の年少人口は406人から53人に、15~64歳の生産年齢人口は1496人から696人に減っている。
日本全体では、年少人口の減少率が38.9%、生産年齢人口は2.8%の増加となっている。同村の年少人口の86.9%減、生産年齢人口の53.5%減という数字からはその深刻さがうかがえる。
十勝管内では、年少人口と生産年齢人口も30年間で減少した一方、自治体ごとに差がみられる。
帯広市と周辺3町では年少人口の減少幅は小さく、生産年齢人口はいずれも増加し、帯広で2.5%、音更町は30.2%伸びた。
他方、管内東部や北部の自治体を中心に、年少人口と生産年齢人口の30年間の減少幅は大きい。管内で双方の減少幅が最大だったのは陸別町で、特に生産年齢人口の減少率は57.4%と音威子府村を上回る。
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