ID :
4296
公開日 :
2007年
7月18日
タイトル
[筋交いで耐震性アップ…防災の大切さ「実演」で学ぶ
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新聞名
読売新聞
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元URL.
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20070718ur01.htm
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元urltop:
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写真:
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地震や津波などの最新の研究成果を、教育現場に生かす試みが広がっている。子供たちを通じて、正しい防災の知識を家族や地域に広げる狙いがある。
先月21日、東京都小平市の小平第二中学で、東北工業大の田中礼治教授(耐震工学)が、3年生に耐震診断をテーマに授業をした。
木の枠の模型を使って、筋交(か)いの効果を実演。家に見立てたただの四角い木の枠は、少し押しただけで、柱部分が簡単に倒れたが、柱とはりの間に斜めに筋交いを設置すると、押しても柱は揺るがない。「すごい
」。生徒からは感嘆の声が上がった。
家の形や壁の長さから、建物の強度を計算して、耐震性を調べたり、震動発生装置で補強していない住宅が簡単に倒れるビデオを見たりした。
南里有美(なんりゆうみ)さんは「筋交いの効果には驚いた。家でも地震の話をしてみたい」と興奮ぎみ。これこそ、防災教育の目的でもある。
田中教授は5年前から、こうした独自の教材を使って、東北地方で建築士と一緒に防災教育に取り組んできた。今回は、取り組みを全国に広げようと、初めて東京で授業を行った。秋には小平第二中の生徒たちに、学校
周辺の住宅で実際に耐震診断を実施してもらう予定だ。
文部科学省も今年度、防災研究の成果を教育に活用するための懇談会を設置した。林春男・京都大教授ら研究者と教員が一緒になって、子供が興味を持つ教材作りや継続的に学ぶためのカリキュラムの体系化を議論
している。
同省地震・防災研究課は「子供たちに防災の重要性を伝えれば、彼らが大人になったときに役立つ」と期待する。
防災教育が注目される背景には、地震や津波の仕組みが研究で明らかになる一方、成果が国民に十分に伝わらず、防災・減災に向けた行動につながっていないという危機感がある。
気象庁が静岡市や岩手県宮古市で行った住民調査では、津波は予兆なしに来ることがあるにもかかわらず、回答者の75%が「大津波が来る前には必ず海の水が引く」と勘違いしていた。
田中教授は「子供たちの参加によって地域の防災活動は活性化する。災害に強い町づくりの第一歩は子供が家庭で親と地震などを話し合うことだ」と力説している。(