ID :
4127
公開日 :
2007年
6月18日
タイトル
[完成まで5年、家造りが生きがいに
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新聞名
旅ゅーん!
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元URL.
http://www.yomiuri.co.jp/tabi/domestic/inaka/20070615tb01.htm
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元urltop:
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写真:
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クルーザーを操り、スキーに熱中した石田さんだったが、憧れていたのは「いつかは田舎暮らし」だった。それも建売住宅や古民家を買うのではなく、造成されていない土地を購入し、自分の思うままに拓き、
家を建てるというのが生涯の夢であった
そうした一念が届いたのか、南伊豆の沖合をクルーザーで航行している時、目に飛び込んできたのが海を見下ろす高台の森林だった。クルーザーなどを手放し、土地を購入したのは2001年の春のこと。それ以降、石
田さんの生活は一変する。毎週のように南伊豆を訪れ、夫婦二人で森を伐採、基礎工事も自分たちで行った。気がつけば、ログハウス造りに着手してから5年以上の歳月がたっていた
2年に及んだ片道5時間の伊豆通い
1階と2階の手すり部分は木の色が異なる。柿渋を塗ったかどうかの差だ 構想1年、理想のプランを決めてから夫婦二人の森林伐採が始まった
「誕生プレゼントにチェーンソーをもらった時は目が点になりました。でもね、主人が気に入った土地は、私にとってもすてきな場所でした。だから、どんなに伐採作業がつらくても、文句を言った記憶がありません」
と、みやこさんが言う
森の伐採とひとことで片付けられるほど簡単なものではない。当初はチェーンソーの入れ方もわからない。蛇やハチの巣の恐怖もある。夕方になれば、虫に悩まされた
しかし、それよりも苦労したのが埼玉県の自宅から、南伊豆までの片道約5時間のドライブとガソリン代であり、民宿に支払う宿泊料金だった。伐採は2年にも及んだから、かかった経費は想像以上だっただろう
2年後に土地の整備が終わると、3年目の作業として最初に取り掛かったのが露天風呂とトイレの建築だった。その後に仮眠のための「ミニ小屋」を造っている
「トイレがあれば用を済ませに遠くまで行く必要がない。風呂があれば汗を流せる。そして、仮眠所があれば民宿に泊まる必要がないと、単純な理由で作業を始めました」
これらはどれも石田さんを中心に、夫婦が力を合わせて造ったものだ。現在、最初に造ったトイレは畑の横に残り、バーベキューパーティーの際に重宝している。ミニ小屋はバーベキュー用のキッチンになり、海を見下
ろせる露天風呂は最高のくつろぎの場になっている
やること山積で「まだまだ未完成」
手前は最初に造ったデッキとミニ小屋。左にトイレ棟、奥にはログハウス 仮眠所が完成すると、いよいよついの住みかとなるログハウスの建設が始まった。と、書くほどスムーズに事は進まない。なにしろ、できること
は全部自分で行うというのが石田さんのポリシーなのである
それからは土台工事となった。自分たちで枠を組み、そこへ手でこねたコンクリートを流し込んでいく。仕上がりのイメージを抱きながらの基礎工事は苦労も多かったが、やりがいのある作業であった
やがて基礎が完成すると、いよいよログハウスの組み立てである。シベリアの木材は良質だが、それだけに重量がある。結局、地元の大工さんに依頼し、組み立ててもらうことになった。しかし、依頼事項は必要最小限
にとどめた。洗面台の設置やログの塗装は自分で行った。気に入ったシンクを探し、手造りの洗面台に置いた。柿渋を知り合いの業者から卸してもらい、それをログに塗った
内装をよく見れば1階部分と2階部分ではログの色が異なる。石田さんは、はにかみながらその理由を答えた
「柿渋を塗るような地味な仕事は、はかどらないのですね。外の工事はどんどん進むのですが、柿渋の作業は進まないから、塗ったところとそうでないところで木材の色が違うのです」
訪ねた時に開口一番、石田さんが言った台詞がある。それは、「まだまだ未完成です。この家の完成まで最低5年はかかるだろうし、これが私のライフワークになるでしょう」というものだった。手造りの家は、当分完成し
そうにない。