ID :
3250
公開日 :
2007年
3月26日
タイトル
[梅の里守る地域力
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新聞名
朝日新聞
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元URL.
http://mytown.asahi.com/nara/news.php?k_id=30000130703260001
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元urltop:
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写真:
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奈良市の北東端に位置し、関西屈指の梅の里として知られる旧月ケ瀬村。売上高で県全体の半分近くを占める大和茶の産地でもあるが、それだけでは満足しないのがここのすごいところ。住民たちは茶の生
産のかたわら農産物直売店を立ち上げ、村は温泉まで掘ってしまった。05年春、村は奈良市に編入合併されて消えたが、「地域を活性化したい」というパワフルな人たちの輪は健在。これからも目を離せないスポットだ
(石田貴子)
■四季を通じて行楽客
名張川をはさむ両山腹に広がる「月ケ瀬梅渓」。遠目には約1万本の梅の花で渓谷が白く煙って見えるほど。3月末、日の当たるところに生えている梅は、もう散り始めていた
約700年前から住民たちが植え、育ててきたと伝えられる。木々の手入れは現在、住民たちがつくる月ケ瀬梅渓保勝会が担う。旧村地域で最も古く、村の文化財にも指定された「桃仙の梅」は推定樹齢600年。太い幹は
朽ちかけ、こけむしているが、枝の上の方に懸命に白い花をつけている。すぐ横でこの古木を支えるように生えている若い梅は、この木がつけた実が落ちて自然に生えた「子どもの木」という
「これから4月になれば、湖畔沿いに約2千本の桜が花を咲かせます」と月ケ瀬観光会館の西脇勝征館長(64)。秋は紅葉、冬は雪景色。四季を通じて、絶えることなく行楽客を呼び込む自然に恵まれている。
■味に個性 おふくろ風
名張川にかかる八幡橋のたもとに「湖畔の里つきがせ」(0743・92・0066)がある。地元の農産物直売所にレストランが併設され、車で訪れた行楽客が休める憩いの場になっている。店内には水菜や大根など、朝採
れたばかりの野菜、漬けものなどが並び、レストランでは地産食材を使ったうどんやお茶漬けを楽しめる
20年ほど前、この地区に住む約10軒の農家が茶の生産のかたわら作った野菜を持ち寄り、仮設テントの下で売りだしたのが始まり。やがてこれに加わる農家が増えて組合を結成し、5年前に現在の瓦ぶきの建物を建
てた。現在は、45の個人とグループが運営する
梅の里だけあって、梅干しの品ぞろえも豊富。見れば、袋に張ったシールに書かれている生産者の名前がばらばら。組合員たちがそれぞれ自宅でつくったものだからだ。「家によって味が違うのもいいところ」とスタッフ
。まさにおふくろの味
■湯量豊か 顔ほころぶ
「梅の郷月ケ瀬温泉」は、梅の花の形をイメージしてデザインされたという近代建築。玄関は円錐(えんすい)形をしたガラス張りの塔になっている。98年に村営温泉としてオープンし、奈良市が引き継いだ。神経痛や
関節痛、冷え性などに効能があるという
男湯、女湯ともに大浴場と露天風呂を備え、テレビを見られるサウナやマッサージ室もある。村が近くに建てた福祉施設の中に温泉を引こうと試掘を始めたが、予想以上の湯量があったため温泉施設を建設したそうだ
。「梅の名所月ケ瀬には温泉もある、と言えるようになり、うれしい誤算でした」と支配人の山下省三さん(59)は顔をほころばせる。