ID :
2135
公開日 :
2006年
11月25日
タイトル
[木造住宅実験、耐震基準内でも倒壊? 産学研究会
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新聞名
http://www.asahi.com/housing/news/TKY200611230297.html
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元urltop:
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写真:
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建築基準法に定められた耐震強度を守って建てた木造住宅でも、阪神大震災(震度7)クラスの地震で倒壊する危険性があることが、国土交通省の外郭団体などの実験で分かった。震度6強~7程度で倒壊
しないことを目標に定めているはずの国の耐震基準が、巨大地震への備えとして十分でない可能性が浮かび上がった。昨年11月に発覚した耐震強度偽装事件ではマンションの強度に注目が集まったが、木造住宅の耐
震性も検証が求められそうだ
実験後の「耐震等級1」の建物。安全のため内部に張り巡らせたワイヤで形を保っているが、柱は壊れ、実質的に倒壊状態(建材試験センター提供)
実験をしたのは、国交、経済産業両省の外郭団体、建材試験センター(東京都)に設けられた「木質構造建築物の振動試験研究会」(委員長=坂本功・慶応大教授)。同センターや大学の研究者、住宅メーカーの産学協
同で、04年から取り組んできた。
実験では、独立行政法人・土木研究所(茨城県つくば市)にある振動台(縦8メートル、横8メートル)を使用。延べ床面積106平方メートルの木造2階建て3棟を振動台の上で揺らし、耐震性を調べた。3棟は壁の厚さなど
の違いで設計上の強度が異なり、壊れ方の差を比べた。
3棟のうち最も弱い建物は建築基準法の耐震基準と同じ強度で、国の住宅性能表示制度では「耐震等級1」。阪神大震災の際に神戸海洋気象台が観測した地震波(818ガル)を再現して等級1の建物を揺らしたところ、
1階の柱や筋交いが折れ、実質的に倒壊したという。
等級2(基準の1.25倍の耐震性)では壁板が浮いたり、柱のかすがいが抜けかかったりしたが、倒壊はせず、等級3(1.5倍の耐震性)は変形したものの、構造部分はほぼ無傷だった。
3棟には、内壁や内外装がほとんどないが、建物の強度は、柱やはりなど構造部分で確保するのが基本とされる。
国交省によると、基準法の耐震基準は「震度6強、7程度の大地震で人命に危害を及ぼすような倒壊などの被害を生じないこと」を目安にしている。阪神大震災でも、現行基準で建てられた82年以降の建物に大きな被
害が少なかったことから、「現行の基準はおおむね妥当」としてきた。
実験結果について、坂本教授は「現行の建築基準法は、巨大地震への備えが必ずしも十分ではない。また、木造住宅の耐震性能の評価基準も、実際の強度とズレがある。住宅の設計や耐震補強に携わる者は、余裕の
ある強度をめざすべきだ」と話す。
国交省は「実験で倒壊した建物は通常の住宅と異なり、耐震基準通りの木造住宅がただちに危険とは言えない。基準の見直しは考えていない」としている。ただ、木造住宅の耐震性については、データ収集の必要があ
るとして、年度内にも実物大のモデルを使った実験に取り組む予定だ。
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〈キーワード:耐震等級〉 住宅性能表示制度に基づく建物の構造の強さの目安で、地震に対する倒壊、崩壊のしにくさを表す。等級1~3の3段階で示し、等級1は、建築基準法に定められた最低基準と同等で、数百年に
一度発生する地震(各地で異なり、東京は震度6強~7)でも倒壊しない強さ。既存住宅の等級は民間検査会社が有料で評価している。また、基準法以上の耐震性があるかどうかは、自治体などが行っている耐震診断で
知ることができる。