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木造建築のネツト記事
ID :  1576
公開日 :  2006年 9月 1日
タイトル
[岩国伝統建築を学ぶ米国人の大工
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新聞名
中国新聞
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元URL.
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn200609020008.html
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元urltop:
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写真:
 
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岩国市の錦帯橋架け替え事業に携わった棟りょう、海老崎粂次(くめつぐ)さん(60)=同市関戸=の下に通い、日本の建築文化を学んでいる米国人男性がいる。昨秋、ハワイから廿日市市に移住した大工チ ャールズ・ボウエンさん(41)。「あこがれの伝統建築を、最高の技術を持つ人から学べる。幸せです」。喜びをかみしめ、修業に励んでいる。(田中美千子)  海老崎さんは、岩国伝統建築協同組合理事長でもある。ボウエンさんは日曜を除く毎日、岩国市関戸の作業場で手伝う。現在、取り組むのは木造の薬師堂。くぎを極力使わず、用材を組み合わせて造る。ボウエンさんは 「初めて見た。すごい工法」。師匠の手元を、食い入るように見つめる。
 海老崎さんから英語で指示を受け、時々のみを握る。「簡単に削るな。まず考えろ」「後世に恥じない仕事をしろ」―。厳しい言葉も、真剣な表情で受け止める。「師匠の言葉は、何でも吸収したいんです」  米マサチューセッツ州出身。大工の祖父や配管工だった父の影響で、幼いころから大工を目指した。二十歳代で独立。単身、ハワイに渡り、店舗の内装、民家のリフォームなどを手掛けてきた。
 転機は六年前。ハワイでボディーボーダーを目指していた中島絵実さん(32)に出会った。昨年十月に結婚し、絵実さんの郷里の廿日市市内に移り住んだ。宮島の寺社や錦帯橋に触れ、「大工としての幅を広げたい」と の思いは膨らんだ。「職人の下で学びたい」。機会に恵まれず、帰国も考えていた七月下旬、知人に海老崎さんを紹介された。
 熱意に押された海老崎さん。「技術は簡単には身に付かんが、通ってみればいい」と受け入れた。「どこにどんな材を使うのか。細かい工程まで理由があるのに驚いた」「スピードやもうけを追求する仕事と違い職人は 作品に誇りを持っている。膨大な時間と労力を注ぎ、最高を目指している」―。ボウエンさんは魅力を語り出すと止まらない。
 「毎日が勉強で新鮮」と声を弾ませるボウエンさん。「日本の若者は自国の素晴らしい文化に気づいていない。若い大工が少ないのが不思議」という。海老崎さんは「本当は日本人に同じ思いを持ってほしいね」と笑い、 温かく見守っている。