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ID :  1384
公開日 :  2006年 7月24日
タイトル
[上昇気流に乗る林業、製材業
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新聞名
swissinfo Switzerland
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元URL.
http://www2.swissinfo.org/sja/Swissinfo.html?siteSect=105&sid=6905963&cKey=1153922753000
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写真:
 
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ここ数カ月、木材需要は世界的な高成長を記録しているが、これにはさまざまな理由がある。中央ヨーロッパでは、製材原料となる針葉樹の丸太をめぐって、文字通り、競争が始まった。こう述べるのは、下院 議員でありスイス営林の代表でもあるマックス・ビンダー氏だ。
手ごわいライバル  ビンダー氏によると、これらの木材は燃料として使用されたり、建設業界で利用されたりする中で正真正銘のブームを巻き起こしているそうだ。しかし、市場の活気に完全に与ろうとするならば、スイス林業は業界構 造をさらに発展させ、生産性をより高める必要があるという。
 ビンダー氏はまた、新しい製材所を建設したり、既存の製材所の生産能力を増加させるなどすれば、木材加工業者へ木材を提供することも可能になるはずだと予測する。このような動きはもうすでに始まっており、ドマ ト/エムス ( Domat/Ems ) やルーターバッハ ( Luterbach ) など各地の製材プロジェクトで木材加工産業への大規模な投資がスタートしている。
 この上昇傾向は、スイス製材業連盟 ( Lignum ) の西スイス部長であるマルクス・モーザー氏も認めるところだ。彼は、木材に対するこの高需要は上昇を続ける石油価格にもその原因があると見ているが、この「高貴な」原料である木材が単にエネルギー、つまり熱を 得るためだけに利用されているのは残念だとも言う。
 建築分野は、革新的な技術や防火に関する規定が改正されたおかげでずいぶん進歩している。スイスは木材の供給量も多く、その質もライバルに負けていない。「しかし、国際競争は厳しいですね。モノカルチャー( 単一作物 )型林業が幅広く浸透している北欧諸国についていくのはとてもたいへんです。北欧諸国の方がマージンが低い上にスイスには強力な環境保護の伝統があり、これもまた難しい要因となっています」 苦境の20年  一方で、「数年前から継続されている再構築が徐々に実を結んできています」と言うのはエリザベート・グラフ氏だ。連邦森林降雪国土研究所( WSL )の研究員である彼女は、2005年に「スイスの森林の未来」( フランス語のみ )という研究をまとめた。
 その中でグラフ氏は、1980年代の終わりから経費と売り上げの差が開き始めたと指摘している。その理由としては、低い木材価格、高い経費( 人件費、森林所有の細分化、踏み入りにくい土地など )、複雑な事務手続き、連邦の予算削減に伴う補助金の減少などが挙げられている。 さらに、ビビアン ( 1990年 ) やロター ( 1999年 ) などの嵐、2003年夏のかんばつ、キクイムシによる被害の一部蔓延などの影響も大きい。
「多機能」林  連邦環境省環境局 ( BAFU/OFEV ) のクリスティアン・キュヒリ氏は、1960年代以降、スイスの森林が負う課題は大きくなる一方だと述べる。森林は、雪崩や地すべり、土地の浸食などを防ぐ機能を果たす一方で、「緑の肺」として人間の保養地域となり、さら に飲料水の「浄化装置」の役目も果たしている。また、種の多様性を保持するためにも欠かせない存在だ。
 そのため、森林の健康管理はしっかりと行わなければならない、とキュヒリ氏は警告する。中でも恐ろしいのは、大気中の窒素が地下水に入り込む危険性が増大していることだという。
過少利用  森林の経営は、森林の永続的な活用を定めた1991年の連邦森林法によって規制されており、その監督は各州に任されている。連邦当局によると、営林事業は2001年には76億フラン ( 約7200億円 ) の利益を上げており、国内総生産 ( GDP ) の1.8パーセントを占めている。しかし、本来なら800万立方メートルの木材利用が可能であるにもかかわらず、2005年に利用された木材は520万立方メートルにとどまっていることから、まだ改善の余地が残されている ようだ。しかも、森林総面積は増加している。これを別の数字に置き換えてみよう。2004年の木材輸出額は37億5000万フラン( 約3500億円 )、一方の輸入額はおよそ60億フラン( 約5600億円 )に達している。