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ID :  1273
公開日 :  2006年 7月 2日
タイトル
[木材から軽油を連続合成する新しいプロセス
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新聞名
産業技術総合研究所
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元URL.
http://www.aist.go.jp/aist_j/aistinfo/aist_today/vol06_07/p18.html
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元urltop:
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写真:
 
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 われわれは、木材のガス化、ガスの精製、炭化水素の合成(FT合成)を同じ圧力の下で行う新しいプロセスを開発し、わが国で初めて、木材から軽油を連続的に合成することに成功した。これは、従来の方 法に比べ、ガスの圧縮・再加熱の工程がなく、装置を小型化できるため、木材収集所まで持ち込める低コストな可搬型プラントへの応用が期待できる。地球温暖化の抑制と化石燃料の使用量の低減が地球規模で求めら れている。そのため、化石燃料に代わる再生可能エネルギー源を用いたエネルギー変換技術の開発が注目されている。バイオマスは、再生可能エネルギーの一つであり、厳密には定義されていないが、エネルギー資源 の観点からは、「ある一定量が集積した動植物を起源とする有機性資源と、これを起源とする廃棄物の総称(ただし、化石資源を除く)」とすることが多い。バイオマスは木材、建築廃材などの木質系、稲わらなどの草本 系、下水汚泥などの糞尿・汚泥系に分類することができる。バイオマスを原料としたエネルギー(バイオエネルギー)の燃焼により排出される二酸化炭素は、光合成によるバイオマスの成長により、吸収・固定化される ため、大気中の二酸化炭素を増加させることはない。特に木質バイオマスは、他のバイオマス種よりも、二酸化炭素の固定量が大きい。
 軽油は、日本において、年間4000万キロリットル使用されており、われわれが社会生活を営む上で重要である。また、軽油中の硫黄分が自動車排ガス処理用の触媒を被毒することから、サルファーフリー軽油(10ppm 以下)の使用が望まれている。木質バイオマスは硫黄含有率がたいへん低いため、クリーンな軽油の合成に適したエネルギー源の一つと考えられる。
 このような背景を持ち、木質バイオマスによる軽油合成プロセスの開発が重要視されながらも、木質バイオマスを原料とした変換技術の経済性が上がらない理由の一つに、木材の収集コストが高いことがある。その 解決策として、大型プラントへ木材を収集するのではなく、木材の集積所へ持ち込んで利用できる可搬型の小型プラントが有望と考えた。
新しく開発した軽油合成プロセス  木質バイオマスから軽油などの液体燃料を合成するには、ガス化を経由するルートが考えられる(図1)。従来のプロセスでは、木質バイオマスを高温(600~1000℃)でガス化し、室温で水などを用いてガスを精製 した後、昇圧および再加熱工程を経て、ガス中の一酸化炭素と水素からFischer- Tropsch(FT)反応(200~350℃、2~5MPa)により炭化水素を合成し、水素化分解を経て軽油を得る。この方法は、基本的には大規模なプロセスで、小型化するには従来よりもプロセスを単純化する必要があった。
 そこで、われわれはガス圧縮・再加熱工程を省略したプロセスを考えた。つまり、ガス化からFT合成工程までを同じ圧力で行うことにし、ガス圧縮工程を省略した。また、反応温度をガス化温度>ガス精製温度>FT合 成温度とすることで、再加熱工程を省略した。なお、高温でのガス精製には水ではなく活性炭を用いた。