ID : 15751
公開日 : 2010年 4月15日
タイトル
みやぎ環境税 「疲弊林業」再生に期待
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新聞名
MSN産経ニュース
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元URL.
http://sankei.jp.msn.com/region/tohoku/miyagi/100415/myg1004150243001-n1.htm
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写真:
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平成23年度からの導入が決まった宮城県の「みやぎ環境税」。税収の使い道は文字通り環境対策だが、なかでも大きな位置を占めるのが県内森林の整備だ。県は、税収を財源に植林や間伐、作業道整備などを積極的に助成していく考え。二酸化炭素(CO2)を吸収する樹木の役割に着目し、豊富な森林資産を地球温暖化対策に役立てる狙いがある。県民にとっては負担増だが、疲弊した県内林業家からは新税に期待の声が挙がっている。(高山豊司)◇ 「この辺はほとんどすべて“要間伐林”だね」 林業家1600人が加盟する仙南中央森林組合(宮城県角田市)の佐藤正友代表理事組合長(61)は林道脇の杉林を指してそう説明する。 その杉林には、直径10~20センチほどの若木がひしめき合うように生え、折れ曲がった木も目立つ。葉に遮られ、地面には日の光もほとんど届かない。過密林とも呼ばれる。よい木材を得るためには、余計な樹木を間引く「間伐」が不可欠だが、手間をかけられない杉林が増えている。 林道をさらに進んでいくと、山の片側だけ木が一本も見あたらない場所があった。木を切り出したあと、植林をあきらめた「造林放棄地」だという。近くの林業家の男性(50)は、「木を植えないと表土が流され、ほかの植物も根付かなくなる」と話す。過密林や造林放棄地は、疲弊した林業の象徴でもある。■ ■ ■ 「林業は、昭和50年代をピークに衰退が著しい」(佐藤代表理事組合長)。木造住宅の減少、輸入材の増加、地域の高齢化などが重なった。「1ヘクタールあたり植林には110万円、間伐には25万円程度がかかる。収益は40~50年に一度しかあがらない。1ヘクタールの杉を切り出しても収入は30万円程度。山持ちといえば聞こえはいいが、“金ばかり使う放蕩(ほうとう)息子”がいるようなもの」(同)だという。 国や県は、林業振興や国土保全の名目で、林業向けにさまざまな助成制度を実施してきた。宮城でも、年間6億円程度の予算を確保してきたが、財政難などで最近、減少に転じた。「政府の事業仕分けも、林業向けの公的資金を細めた」(関係者)との指摘もある。 「県の環境税で、森林整備に安定的に資金が回ってくれば、工夫次第で林業再生も夢ではない。期待は大きい」(佐藤代表理事組合長)。 みやぎ環境税は、県民税均等割分の超過課税の形で、個人から年1200円、法人からは標準税率の10%相当額を徴収する。元々は、森林整備を中心とした目的税として検討されたが、最終的にはクリーンエネルギー導入支援などにも振り分けられることになった。5年間の税収80億円のうち、35億円以上が森林整備に活用される見通しだ。■ ■ ■ 宮城県は現在、平成23年度以降の地球温暖化対策の中期計画を策定中だが、実はCO2の排出量削減にめどが立っていない。県内には自動車関連などの工場集積が加速しているためだ。そこで目を付けたのが、県内森林によるCO2吸収力。「県の森林全体で、年間234万3000トンのCO2を吸収できる」(県林業振興課) 温暖化対策で、森林のCO2吸収量の活用は認められているが、「国際ルールとして、一定以上の人の手が加わった森林でなければカウントできないことになっている」(県環境政策課)という。新税を財源として間伐や植林などで人手を加え、県内のCO2排出量をトータルで抑制。併せて県内林業の衰退に歯止めをかけるという“一石二鳥”の狙いが、新税導入の背景にある。 ただ、林業衰退の根本には、木材の需要不足がある。森林再生から林業復活に発展させることができるか。道のりにはいくつものハードルが待ち受けているといえそうだ。◇【用語解説】自治体での環境税 30以上の自治体が森林環境税などとして導入している。平成15年にいち早く導入したのは高知県で、個人への課税額は500円だった。東北地方では福島、岩手、山形、秋田が導入している。 個人への課税額は500~1000円程度で、みやぎ環境税が全国で負担がもっとも重い。導入案を審議した宮城県議会では反対意見も強く、税の使い道を明確化すべきとする異例の付帯意見を付けたうえで、賛成多数で可決された。村井嘉浩知事にとっては、「みやぎ発展税」に次ぐ独自課税となる。