寺子屋プロジェクト
林業技術者のプロ育成
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新聞名
岐阜新聞
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元URL.
http://www.gifu-np.co.jp/tokusyu/2010/gifu_kairyu/4/gifu_kairyu4_10.shtml
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元urltop:
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写真:
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「荒廃林は下層植生が無く、どんどん土が流れる。多様な植生維持の要となる埋土種子も流れてしまうので間伐後も何も生えない」「ヒノキは雪害でも折れない半面、台風などで根こそぎ、山中にぼこぼこ倒れている」
郡上市の林業NPO法人「ウッズマン・ワークショップ」代表の水野雅夫さん(48)が全国各地を歩いて目にした人工林の現状だ。
名古屋市出身で、映像プロデューサー時代に長良川流域をよく歩いた。森林の危機を知って1997(平成9)年、郡上に移住し林業家に師事。2001年、Iターン仲間で「林業で食える法人」を目指し、間伐施業を進め、人材育成を図るため同法人を設立した。
都会人向けの林業Iターン・ミーティング事業は昨年で10回目。07年からの林業・寺子屋プロジェクトも順調だ。6コース14メニューと間口の広い山仕事研修会で、自伐林家やボランティア、プロも素人もやってくる。
一昨年、全国の現場作業員や学者、事業主ら14人で林業トレーナーズ協会を設立。初心者指導用のDVD教材制作や全国各地の指導講習会講師に引っ張りだこ。教え子は全国に千人を超える。
郡上市で今冬開かれた「寺子屋」。受講生の自営業岩月麻里さん(53)=名古屋市=は「白川町の実家の山が荒れ放題。基本を身に付けたい」。自然保護活動から森林ボランティアを始めた会社員古川善嗣さん(59)、てる子さん(59)夫婦=同=も「技術をきちんと学びたい」などと、1人2本ずつの伐倒実習に真剣に臨んでいた。
「林業技術者は今や4万人台。高齢化が進み、事態は深刻。100人のボランティアより、1人でもプロを育てたい」と水野さん。
ボランティアや市民は即戦力にはならないが、「森林を守るとはどういうことか。どんな森林で問題が起き、放置するとどうなるか、正確な情報を知った上でそれを広めてほしい。1本でも木を切った体験はその時役立つはず」と話す。
ピンチをチャンスにと、木材自給率5割、木の文化の再生、緑の雇用拡大などを目指す森林・林業再生プランを掲げる民主党政権になって半年が過ぎた。だが、山が本当に動くのは、森林のピンチとは何か、国民がよく知り、理解した時だろう。