ID : 15350
公開日 : 2010年 3月12日
タイトル
働きがい 林業に求めて
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新聞名
スポーツ報知
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元URL.
http://job.yomiuri.co.jp/howto/column/co_10031201.htm?from=hochi
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元urltop:
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写真:
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大手精密機械の企業から森林組合の作業員に転職した男性がいると聞き、先月大田原市森林組合を訪ねた。
大田原市須佐木の山里の寒さは厳しい。細いつづら折りの道に沿って行くと山すそに着いた。木の倒れる音がこだまする。案内してくれた組合の技師が、山の峰に向かって大きな声で作業員に下りてくるよう叫んだ。それに応える声が響き、間もなく数人が急斜面を下りて来た。丸太の上に車座になって話し出した。
転職した男性は堀川望さん(40)だ。山梨県出身で、沖縄県に両親と住んでいたが、栃木県の清原工業団地の大手精密機械製造会社に期間工として約2年間働いた。研磨の仕事をしていたが会社ではほとんど会話がない。本当の仲間もできなかった。機械に働かされている自分に疑問を感じた。精神的にも耐えられなくなってきた。
その後、契約期間が切れ、若者を自立させるための県東部にあるNPO法人で、仕事を探しながらフリーターとして合宿生活を送った。同宿の友人は、仕事で疲れた病気の人やフリーターばかりだ。出会った人が、県の林業労働力確保センターを紹介してくれた。
幼少の頃から自然相手の仕事をしたいという思いがあった。就業支援のための講習を受けていた時、大田原市森林組合で作業員を募集していると聞き受験した。2008年4月に採用となり、思いがかなってうれしかった。沖縄の両親に連絡したら喜んでくれた。
今の仕事で、まず感じるのは、作業員同士の思いやりと心のふれあいだ。昼休みに弁当を広げて、仲間と対話していると、自分の心が癒やされていくのが分かる。そして大木が倒れてドーンという響きが広がり、根元が躍り上がる時の感動は何物にも代え難い。効率社会、拝金社会から離れられたと実感する瞬間だという。「遠回りだったけれど、40歳にしてやっと自分の生きる道が見つかった」と語る。
CO2抑制に大きな役割を果たしている森林が荒廃している今、林業には彼のような人材が必要だ。現場は新たな担い手を欲しがっている。働きがいを求める人は林業を仕事とすることを考えてみてほしい。