ID : 1662
公開日 : 2006年 9月20日
タイトル
恵南豪雨 山の荒廃が流木生む
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新聞名
岐阜新聞
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元URL.
http://www.jic-gifu.or.jp/np/newspaper/kikaku/kaiki3/kaiki3_7.htm
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元urltop:
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写真:
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「あれは朝の4時ごろやったかな。川を見に行くと、川の中には流木がぎっしり。川が山のように盛り上がってこっちに迫ってくるようやった」。2000(平成12)年9月12日、旧恵那郡上矢作町(現恵那市)を襲った恵南豪雨災害を振り返るのは、当時同町本郷地区の区長だった平出一雄さん(69)。 「とにかくすごい雨。川の水位はどんどんと上がり、みるみるうちに道路も川みたいになった。水だけじゃなく、流木とか岩とかが流されていった。ごうごうと音をたてて。怖かったな」と平出さん。もはや人間の力ではなすすべもなく、区長として住民を安全に避難させるために奔走した。 濁流の破壊力はすさまじかった。橋げたには流木が引っ掛かり、そこに次々とまた流木や岩がぶつかる。同町内の上村川に架かる19の橋のうち6つを押し流し、そのほか支流の4つの橋も破壊した。平出さんの知人が撮影したビデオには、濁流にのみ込まれ、無残に橋脚だけを残した橋が映っている。 このように恵南豪雨災害の特徴は、河川に流れ込んだ大量の流木によって被害が拡大したことにある。間伐の遅れによる山の荒廃が土砂災害を誘発するという近年の現象を象徴する災害だった。 同町は総面積1万3096ヘクタールのうち、94%に当たる1万2312ヘクタールが森林。このうち72%が人工林だ。 平出さんは元役場職員で林政を担当していた。「この辺りは林業で生計を立ててきた土地。昭和50年代に林政担当だったが、とにかく木を植えた。雑木林だったものをスギやヒノキなどを植えて人工林に変えていったんです。今思うと広葉樹も残さないかんかった。植えすぎてしまった」と話す。 その後は木材価格が下落し、林業が衰退。そのため間伐などの手入れがされずに森林は荒廃していった。もちろん同町だけの問題ではなく、全国各地の森林が同じような状況に陥っている。 県は災害に強い森林づくりに重点を置いており、緊急間伐推進計画として、2000年度から間伐に対する補助を実施。04年度までの5年間では県内各地の約5万6000ヘクタールで間伐を実施。同町内では、この補助制度によって1291ヘクタールで間伐が進んだ。さらに05年度からの5年間では、県全体で7万4000ヘクタールで間伐を進める計画だ。 特に今年は5月21日に下呂市で全国植樹祭が開かれたのを契機として、県は林業の活性化を図ろうとさまざまな施策を展開している。林業の復興は、森林の再生に直結するからだ。 では、山づくりは誰がやるのか。行政や森林組合などが動くのは当然のこと。さらに、それぞれの森林所有者が自分の山をもう一度見直すことが不可欠だろう。森林は財産としての価値だけではなく土砂災害防止の機能も果たしているということを。災害が起こってしまった後ではもう遅い。