ID : 14720
公開日 : 2010年 1月22日
タイトル
県林業公社の巨額負債 背景に木材価格下落 /山梨
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新聞名
毎日新聞
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元URL.
http://mainichi.jp/area/yamanashi/news/20100121ddlk19040107000c.html
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元urltop:
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写真:
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すべて売っても「赤字」 検討委、改革案先送り 県が出資する公益法人・県林業公社(甲府市武田1)が267億円(08年度末現在)もの巨額の負債を抱えている。県の包括外部監査人は解散にも言及したが、18日に開かれた県の出資法人経営検討委員会は「国の支援策などが定まっていない」として、改革案の策定を先送りした。公社の抱える問題の背景を探った。【沢田勇】
林業公社は所有者から借りた森林を整備・育林し、伐採した木材の売上金の一部を所有者に分配する「分収林事業」を主な事業としている。戦後の木材需要の高まりに対応するため1950~60年代に国策として各地に作られた。県林業公社は65年に設立され、現在8000ヘクタールの森林を借り受けて管理している。
公社の負債が膨らんだ直接の原因は、農林漁業金融公庫(現日本政策金融公庫)から多額の融資を受けたことによる金利負担。だが、その背景には、外国産材の流入に伴う木材価格の下落がある。
林業は、投資してから収益を上げるまで40年以上かかる。県林業公社は65~08年に公庫から計183億円の融資を受け、植林や下草刈りなどの費用に充てた。ところが、木材の輸入自由化で木材価格は80年をピークに暴落し、仮に今、契約している森林の木材を全部売ったとしても、利益を上げることは不可能だ。
県林業公社の試算では、契約を結んだ森林の伐採を終える2055年には、203億円の赤字が見込まれるという。このため、県林業公社は02年度から新規契約を結んでいない。
県の包括外部監査人を務めた古屋俊一郎公認会計士は、08年度の監査報告で「当初予想した事業スキーム(計画)は事実上破綻(はたん)しており、存続か解散かが問われている」と厳しく指摘した。
さらに古屋氏は、解散しても多額の長期債務は県が負担せざるを得ないことから、現在は所有者に4割分配している収益を1割にして公社の取り分を増やし、債務を減らすよう提言している。
しかし、県森林整備課の宇野聡夫課長は「既になされた契約を、今になって変更することにすべての人が応じるのは困難」と話す。
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森林整備法人全国協議会のまとめでは昨年3月末現在、36都道府県に40林業公社があり、長期債務の総額は9832億円にも上る。
2公社が合計約1000億円の債務を抱えていた滋賀県は07年11月、「将来の伐採収益でも弁済できない」(同県森林政策課)として、全国で初めて農林漁業金融公庫(当時)や資金を貸していた大阪府や兵庫県など自治体に債権放棄を求める特定調停を申し立てた(現在協議中)。
岡山県は公社に無利子貸し付けを行い、約700億円の債務を県が肩代わりした。山梨県は、公社の負債のうち、約180億円について低利や無利子の貸し付けで肩代わりした。
岩手県林業公社(債務622億円)と大分県林業公社(同285億円)は07年に解散し、県が債務を引き継いだ。神奈川県も今年度で解散させる方針だ。
ただ、解散しても最終的にツケが都道府県に回ってくることに変わりはない。国は01~07年度、林業公社に対し、公庫の融資を低金利の融資に借り換えることを認めるなどして支援してきたが、抜本的な対策は打ち出せていないのが現状だ。
林野庁は「防災や環境保全の観点から誰かが森林を管理しなければならない」(整備課)と公社の存在意義を強調する。森林の維持が必要なのは事実だ。
県林業公社の大芝秀明事務局長は「今の状態に陥ったのは都道府県と公社だけの責任ではない。採算だけでなく公益性の観点からも、債務をどう減らすのか真剣に考えなければならない」と話している。