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ID : 14450
公開日 : 2009年 12月18日
タイトル
農and森:間伐材活用シンポジウム 豊かな森を次世代へ
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新聞名
毎日新聞
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元URL.
http://mainichi.jp/life/ecology/news/20091218ddm010040120000c.html
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元urltop:
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写真:
 
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 豊かな森林を次世代に引き継ぐ方策を探ろうと、間伐材活用シンポジウム(国土緑化推進機構主催、毎日新聞社共催、林野庁後援)が11月17日、東京都千代田区のサピアホールで開かれた。東京大生産技術研究所の山本良一教授の基調講演の後、森林整備や商品化など各分野で活躍する4氏によるパネルディスカッションが行われた。林業をテーマにした「神去なあなあ日常」が話題の作家、三浦しをんさんらのトークセッションもあり、約300人の参加者が詰め掛けた。冒頭で島田泰助・林野庁長官があいさつした。【まとめ・山本悟】
 ◆基調講演 1000年後の子孫や動植物のために--地球温暖化の真実と森のもつ可能性
 ◇20年、残された時間短い--山本良一氏=東京大学生産技術研究所教授 森林とかバイオマスが極めて重要で、一方では、いかに我々が今、危機的な状況に近づいているか、をお話ししたいと思います。
 世界の平均気温が産業革命以前に比べて2度も上がると、引き返すことができなくなりますが、その地点は、大体20年後だと考えられます。私の著書「残された時間」で取り上げていますが、人類にとって残された時間は短い。
 ところが、先進国全体の(温室効果ガス)排出量を90年比5・2%削減するという京都議定書は、アメリカが離脱し、まじめに取り組んでいるのは、日本とヨーロッパだけ。その日本は森林吸収分の3・8%でさえ、危ういと言われています。これは、子孫のほか動物、植物を道連れにして、温暖化地獄の2丁目、3丁目、4丁目に送り込むことを我々はやっているのです。
 また、水不足や食糧不足など気象変化の悪影響は戦争の原因になる、との認識が急激に広まりつつあります。さらに、環境エネルギー革命によってグリーンな雇用を創出すると、これは経済政策であり、従って大胆な気候政策、環境政策こそ、安全保障政策であり、経済成長政策であるということです。
 問題解決には、どれだけ努力しないといけないか。水力発電は2倍に増やし、バイオマスエネルギーは10倍に。太陽光発電は130倍に増やすなど、この20年間で天文学的な努力を払えば、我々は2度以下に抑制できる。
 森林とかバイオマスは、まさに黄金の材料であり、資源であります。(それをいかに有効に活用するかは)政治の責任であり、国民の意識の変化がなければ達成できません。
 ◆パネルディスカッション 森を愛(いとお)しむ-間伐材利用と環境リテラシー
 パネルディスカッションは「森を愛(いとお)しむ-間伐材利用と環境リテラシー」をテーマに行われ、川口裕之・毎日新聞社水と緑の地球環境本部長がコーディネーターを務めた。

 --間伐材の意義や利用促進について。 速水亨氏 いくら切っても、間伐材を使わない限り、市場に木材があふれ、最後はタダになってしまいます。やはり、新しい使い方を考えないといけない。
 甲賀廣代氏 私どもの東京・品川オフィスの役員フロアには、デスクやキャビネット等のオフィス家具に全部ヒノキの集成材が使われています。使用している間伐材は地元と「結(ゆい)の森」を展開している四万十川流域の材料です。それ以来、見学のお客様や社員の多くが間伐材の問題を知るようになり、コクヨ各社の営業マン自らが、目で確かめた体験をお客様にお話しできるという、好循環が生まれました。
 --実際に木を切る立場としては。
 木村高江氏 私たちは、作業道に近い林地でない限り、ほぼ切り捨て間伐です。もったいない、と思いますが、コストとの兼ね合いがネックになって、何ともできない歯がゆさを感じます。ニーズはあるのに出せない。一部はクイやコンクリートの型枠などに活用しますが、運搬コストを考えると、場合によっては、市場から木を買ってきた方が安い、という妙な循環になっています。
 松浦成夫氏 実は私がやっている区域の森林は、転売や相続の未登記とかで、要するに地主が地域にいない。しかも、1人当たり1ヘクタールもない。そうした小規模の山林地域が、全国には圧倒的に多いんです。そういう森林をどうするか。間伐なども、所有者の責任だけではなく、森林の持つ公益的機能を社会全体で理解する、連携ということが、非常に大事であると思います。
 --環境対策として林業の課題など。
 速水氏 私の林を調査したら、ヒノキ林には、243種類の植物があり、広葉樹の生態保護区は185種類でした。つまり、人工林も捨てたものでない。また、ヒノキの下を掘ると、ふかふかした森林土壌があり、環境を意識して手入れさえすれば、人工林は豊かな森林と土壌をつくれることを分かってほしいですね。
 松浦氏 山が荒廃すれば、川の水は必ず減ります。流域の潤いのある環境づくりには、源流部に保水力のある、多様な森をつくることが大事だと思います。
 木村氏 私たちも、切り出した先でどんな製品が作られ、どう使われるかを考え、かかわっている人たちと情報交換することが大切だなと思います。
 --木材生産への具体的な提言などを。
 松浦氏 活動拠点のクラブハウスは、伝統工法で建てました。日本の高温多湿の気候風土で、雨が降り込まず日差しも遮る軒や、熱伝導が低い土壁は、夏は涼しく冬暖かくなるなど、息をしている人間が暮らす家は、息をしている素材で造るべきだと思います。
 甲賀氏 最終的には家とか建材に国産材をたくさん使ってもらうことが、山の適正管理に役立つと思います。しかし、スギやヒノキはいま知られる機会がないので、家を建てる時に、スギ、ヒノキを使う発想にはならない。そこで、私たちのオフィスでスギ、ヒノキの良さに触れ、知ってもらうのも、私たちの重要な役割だと考えています。
 速水氏 スギ、ヒノキは身近でなくなってきた。子供さん、お孫さんと森へ行くことと、身近なところに木を置いて、触った瞬間の感動、なめた味を子供たちに知ってもらいたいです。そして、日本の森林をよくすることは、まず国産材を使っていただくことだ、と思います。
 ◇林業は斜陽じゃない--トークセッションでの発言、作家・三浦しをん氏 祖父が三重県中西部で林業をやっていて、子供のころ、よく遊びに行きました。当時から、林業は斜陽産業と言われ、教科書にも書いてあって、何となく気になっていました。林業をやっている人は、どういう思いで作業しているのか、知りたかったんです。
 三重に取材にうかがって、林業の方々はすごく明るく豪快。活気はあるしコミュニケーション能力も高い。林業への思いを聞くと、全然斜陽じゃない。斜陽産業って失礼な言い方だと思いました。
 山村と(下流の都市部の)街は隔絶してあるのでなく、山がきれいになれば、(街の人が飲む)水もきれいになるということを、少し考えてもいいのかな、と思いつつ、(小説の舞台の)神去村には、明るく楽しく、また奔放に暮らす、その土地に密着して暮らすよさ、みたいなものを詰め込んだつもりです。
 林業は体力的に大変な仕事ですが、若い方の就職候補の一つとして、入れてもらえれば、と思います。
 ◇会場の電気、風力発電で プログラムも間伐材使用 シンポジウム開催中、会場のすべての電力について、風力発電による日本風力開発の「そらべあグリーン電力証書」を購入して賄い、環境に負荷を与えないよう配慮した。さらに、受付で配布したA4判4ページのプログラムは間伐材を使用した紙で作製した。谷福丸副理事長が主催者あいさつした国土緑化推進機構は、緑の募金を通じて集まった寄付金をもとに、間伐など環境貢献活動を助成している。
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