ID : 14287
公開日 : 2009年 12月 8日
タイトル
COP15開幕、コペンハーゲン
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新聞名
ナショナルジオグラフィック
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元URL.
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20061653&expand&source=gnews
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写真:
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12月7日月曜日より、世界の注目がデンマークのコペンハーゲンに集まる。各国首脳や気候学者が集結する国連気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)がいよいよ開幕を迎えた。会期は10日間の予定である。目標は、地球温暖化に対処するための新しいプランをまとめ上げることだ。
写真を拡大印刷用ページ友人に教える COP15とはどのような会議で、どんな目標を達成しようとしているのか、また多くの専門家はなぜ“残された時間は少ない”と考えているのかを改めて確認しておこう。
◆なぜ気候変動に関する取り決めが必要なのか?
地球の気候が現在大きな変動期を迎えているという点については、大多数の専門家の意見が一致している。世界の平均気温は、過去100年の間におよそ摂氏0.7度上昇している。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告によると、この気温上昇は、人為的活動に伴う温室効果ガス排出によってもたらされた可能性が90%以上だという。主な排出源には、発電時や自動車からの化石燃料の消費、あるいは森林伐採などがある。
世界規模の気候変動に関する会議を組織運営する国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の条約事務局によると、0.7度というわずかな温度上昇でも、世界中で発生している干ばつや熱波、暴風雨に影響を及ぼしているという。
UNFCCCの専門家は、「近年は極端な気候・気象現象が増えており、変動の流れを止めるチャンスは非常に限られているのは明らかだ」と口をそろえる。同事務局では、COP15が“人類が難局に立ち向かうきっかけとなった歴史的瞬間”となることを期待している。
◆COP15とは?
「COP」とは、UNFCCCの締約国会議(Conferences of the Parties)を意味している。地球環境問題をめぐる国際条約では、まず一般的な原則を規定する枠組条約を締結し、その下で細かなルールを定めた議定書を締結するという方式がとられる場合がある。地球温暖化に関しては、1992年に気候変動枠組条約が誕生し、その後に京都議定書が合意されている。
そして、枠組条約の締約国会議では、議定書の締約国会合(MOP:Meeting of the Parties)も同時に開催される。今回の15回目のCOPでは、京都議定書第5回締約国会合(COP/MOP5=CMP5)も同時に進められる。
京都議定書は、1997年に京都で開催されたCOP3で締結された国際条約で、排出削減目標には法的拘束力がある。京都議定書では、「2008~2012年の期間中、先進国全体の温室効果ガスの年間平均排出量を1990年レベルと比較して5%削減すること」を目的として定めている。2005年に発効し、現在185カ国が批准しているが、アメリカは批准していない。
「この議定書の削減目標は2012年で期限を迎えるため、“京都”以後の政府指標となる野心的な新たな取り決めを今年中に合意まで持っていく必要がある」とUNFCCC事務局は話す。
◆COP15のゴールは?
UNFCCCは目的として、「気候系に危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させること」を掲げている。
“危険”とはどの程度からなのかという点については現在でも議論が続いているが、大気中の温室効果ガス濃度は、産業革命以前が278ppmであったのに対して、現在は381ppmまで上昇している。
UNFCCC事務局によると、2050年までに大気中の温室効果ガス濃度を2000年レベルの半分まで減らすことが望まれるという。
COP15では、(1)先進国の排出削減方法の明確化、(2)経済成長を阻害しない途上国の排出削減手段の模索、(3)排出削減や温暖化適応策で途上国が必要とする新たな資金の確保、(4)技術・資金分野における途上国の意見の反映、という4つの争点が中心的なテーマとなる。
◆温室効果ガスを効果的に削減する方法は?
UNFCCC事務局によると、温室効果ガスの排出源は、発電や廃棄物管理、輸送、建築といった産業活動がおよそ80%を占め、森林減少に由来するものが20%だという。
しかし、産業分野での排出規制は法改正などの困難が伴うため、温室効果ガスの排出削減を安価かつ容易に行う方法として多くの専門家が重視しているのが、「森林減少・劣化からの温室効果ガス排出削減(REDD)」と呼ばれる戦略である。
京都議定書は産業分野や車両からの排出に焦点を当てており、熱帯林減少については扱っていなかった。
しかしREDDでは、森林減少レベルを改善させた途上国は、その分の排出量の権利(炭素クレジット)を獲得し、炭素市場で先進国に売却できる。
既に実施段階に入っているREDDプロジェクトもある。例えば、世界的な自然保護団体ザ・ネイチャー・コンサーバンシー(TNC)は、ボリビアやブラジル、インドネシアといった国で先駆的な活動を始めている。
TNCがインドネシアのベラウで実施したREDD(森林の減少・劣化に由来する温室効果ガスの排出抑制)プログラムにより、5年間で1000万トンもの二酸化炭素排出削減が実現している。オランウータンなど野生動物に影響を及ぼさずに、経済活性化にも貢献することが明らかになった。これを受け、インドネシア政府は2009年10月、TNCのプロジェクトを全国レベルのREDDプログラムのモデルとして公式に採用することを発表した。
市場メカニズムを利用した地球温暖化対策には、キャップアンドトレード方式の排出量取引などもある。これは先進各国に排出枠が定められており、排出枠が余った国は他国に売却できるシステムになっている。
自国の排出量が排出枠を超過してしまった場合、京都議定書ではいくつかの対処方法を設けている。1つは、途上国や経済移行国(旧社会主義国)の排出削減プロジェクトへの資金供与である。あるいは、ほかの先進国から排出枠を買い入れることもできる。
UNFCCC事務局は、「全体的に、炭素市場は温室効果ガスの排出削減に関して大きな可能性を秘めている。しかし、京都議定書の対象期間が終了する2012年以降も排出削減を持続させるには、各国が新たな取り決めに合意する必要がある」と話す。
◆どうすれば途上国と先進国は合意に達することができるか?
地球温暖化対策をめぐっては、先進国と途上国の間で根強い対立が存在する。途上国の多くは、経済開発や貧困解消に向けた取り組みを妨害するような約束をCOP15で押しつけられるのではないかと懸念している。
また、途上国グループは以前から先進国に対して、これまでの気候変動や温室効果ガス蓄積の“歴史的な責任”を取るよう求めている。
これに対し、先進国側からは、「先進国だけが排出削減義務を負うのでは競争力を失うことになる」という声が上がっている。
通常、気候変動の影響に対して脆弱なのは途上国の方である。例えば、多くの途上国には低地の沿岸地帯があり、気候変動に伴う海面上昇で浸水の被害を受ける可能性も高い。こういった地域の場合、排出削減だけでなく、気候変動の影響に対する適応策を講じる上でも援助が必要となる。
結局のところ、COP15の成功のカギを握るのは途上国だ。現時点で先進国が排出量をすべて削減しても、途上国の将来的な排出量で簡単に相殺されてしまうためだ。
◆アメリカの役割は?
一方、先進国側で注目される国は、1人当たりの二酸化炭素排出量がオーストラリアに次いで世界第2位のアメリカである。世界各国の首脳は、アメリカ上院で審議中の温暖化対策法案が可決されることを期待していたが、残念ながらCOP15には間に合わなかった。このような中、オバマ大統領はどのようなリーダーシップを発揮できるだろうか。