ID : 14147
公開日 : 2009年 11月24日
タイトル
追跡・発掘:知事導入表明の森林税 民有林の荒廃防ぐ 県民税に上乗せ徴収
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新聞名
毎日新聞
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元URL.
http://mainichi.jp/area/yamanashi/news/20091125ddlk19010047000c.html
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元urltop:
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写真:
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森林保全のための新しい県税の導入が実現しそうだ。横内正明知事が12日に「12年度の導入が適当」との方針を示したためだ。どんな税なのか。そして背景には何があるのだろうか。【沢田勇】
森林保全を目的とした税は現在、全国30県で導入されている。
03年4月に高知県が、橋本大二郎知事(当時)の主導で、水源林の維持費を県民が負担する「森林環境税」を導入したのが先駆けだ。個人・法人県民税に年額500円が上乗せされた。県も同様の税を想定している。
特別会計で維持する県有林とは別に、民有の人工林の整備促進が森林税の目的だ。
「遠くからみると緑だが、一歩林の中に入ると薄暗く、下草もない」。県森林総合研究所の林業普及指導員、中桐秀晴さん(41)は荒廃した人工林の様子をそう表現する。
山梨では戦後復興の時期、カラマツなどの大規模造林が行われた。中桐さんによると、その植林は意図的に過密になされた。木が真っすぐ伸び、木材として利用しやすいためだ。しかし、枝打ちや間伐をしなければ、日光不足で下草が生えなくなり、保水力が低下する。大雨が降れば表土が流出し、さらに保水力は失われる。
県森林環境総務課によると、県土の77・8%(34万7599ヘクタール)を占める森林のうち、人工林は15万3459ヘクタール。その6万8000ヘクタールは民有林だが、外国産材に押されて林業が衰退した結果、2万1000ヘクタールは荒廃しているという。
県は地権者の了解を得た上で民有林の間伐などをしたい考えだ。
水源林を守る名目で県は02年、ミネラルウオーター業者に課税する法定外目的税「ミネラルウオーター税」の導入を模索した。しかし、専門家の検討会が「他産業も地下水から利益を得ており、公平性を確保できない」と結論したため、07年6月に断念。その後、高知県と同様の税を目指してきた。
地球温暖化対策の側面もある。
県は今年3月、県内の温室効果ガスの排出量を20年までに05年比で36・4%削減する中期目標を掲げた。森林による吸収分13・2%も盛り込まれており、森林整備は不可欠だ。
県は現在も民有林整備の補助金として県税を投入しており、今年度当初予算では約62億円を計上した。「新税があれば、山林を完全に放棄している地権者の分まで整備が可能になる」(県森林環境総務課)という。
新税は、個人県民税には年間500~1000円が上乗せされ、法人は資本金額に応じて課税される。税収は年間2・8億~5・5億円となる見通し。ただし、今のところ期間は5年間に限定する予定で、その後は効果などを検証した上で継続するかどうか決めるという。
関係者の間には疑問の声もある。県産材を活用して住宅を建築してきた北杜市の一級建築士、畠中実さん(54)さんは「一度荒廃した森林を元に戻すには巨額の資金がいる。わずかな税収で、長年放置されてきた森林をどこまで整備できるのでしょうか」と話している。