ID : 13907
公開日 : 2009年 11月 6日
タイトル
企業の森:荒廃した森林、再生させよう 所有者と協力し保全活動
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新聞名
毎日新聞
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元URL.
http://mainichi.jp/area/yamanashi/news/20091105ddlk19040003000c.html
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元urltop:
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写真:
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◇県内でも広がる 社員教育に活用も 林業の衰退などで荒廃した森林を再生させようと、森林所有者と企業が協力して保全活動を行う「企業の森」が県内でも増えている。06年に山梨市と大手洗剤メーカー「ライオン」(東京都墨田区)の連携で県内で最初に誕生した「ライオン山梨の森」の取り組みを取材した。【曹美河】
山梨市水口の市有林。県道脇の林道を10分ほど上った場所に、約65ヘクタールのヒノキ林が広がる。10月17日、作業服に地下足袋姿のライオンの社員約20人が、密集したヒノキの間伐を行っていた。
「ライオンに入社して、まさか木を切るとは思いませんでした」。新入社員の藤巻洋平さん(23)は、ヘルメットの下から流れる汗を笑顔でぬぐった。普段は営業部で洗剤などを全国の量販店に卸す仕事をしているという。「森の空気でリフレッシュできます」と作業に精を出す。
山梨市とライオンは06年8月、森林整備協定を締結、県内第1号の「企業の森」が誕生した。同社が森林整備費を負担すると同時に、森の手入れや地域住民との交流を通して社員教育を図る仕組みだ。毎年春、夏、秋の3回、社員20~30人が1泊2日で同市を訪れ、峡東森林組合の指導を受けながら植樹や下草刈り、間伐などにあたっている。
参加は希望制で、社員の所属部署はさまざま。今回が6回目の参加となる福島明さん(60)は普段、製品の安全性を監督する仕事をしている。「洗剤やシャンプーなど、ライオン製品の9割が水とともに自然環境に流れ出る。そこで働く人間として、環境を意識する責任がある」と参加した理由を語る。
事業を統括する同社CSR(環境・社会)推進部の永合一雄部長は「森づくりを通して、社員がそれぞれの現場で環境への負荷を意識するようになってきた」と話す。今年からは新入社員研修にも同市での森林整備活動を取り入れ、作業の後は地元住民とのほうとう作りなど交流も行っている。
◇ ◇
「企業の森」は林野庁が92年、国有林で始めた試み「法人の森」が前身。企業の社会貢献活動としてその後、全国に広がった。
山梨県は県土の約8割を森林が占める。しかし、県森林整備課の06年の調査では、県内の森林の約35%を占める私有林の約4割が荒廃している。市町村有林も、財政状況などから手入れが行き届いていないのが現状だ。
こうした実態を受け、07年に県や環境団体、林業者などが「やまなし森づくりコミッション」(事務局・県緑化推進機構)を設立。森林所有者と企業との橋渡しをするようになってから、県内では「企業の森」への参加団体が急増した。現在、31企業・団体が県内で活動している。県みどり自然課は「都心から近い利点を生かし、参加企業を今後も増やしたい」と話している。