ID : 13783
公開日 : 2009年 10月31日
タイトル
COP10:識者に聞く 「天然」の商品価値
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新聞名
毎日新聞
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元URL.
http://mainichi.jp/life/ecology/news/20091102ddm016040012000c.html
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元urltop:
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写真:
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COP10:識者に聞く/下
◇「天然」の商品価値--豪投資顧問会社「ニューフォレスト(NF)」局長、マリサ・メイズリッシュ氏 森林は二酸化炭素を吸収し、多様な生物のすみかや水資源を提供する。ところが、従来型林業は木材の売却益のみ利益計上し、乱開発を招いてきた。
オランウータンの生息地マレーシア・ボルネオ島東北部のマルーア森林保護区は、パーム油生産のため森が破壊され、アブラヤシばかり植えられた。
NFは、豊かな自然が経済的価値も持つと考え、環境を保全する森林管理に投資。NFなどが出資し08年に設立した自然保護銀行は、地元州政府から保護区の土地を借りて森を管理・保護する代わりに、天然資源を活用した「エコ商品」を売って収益を上げている。二酸化炭素排出権や水利権もエコ商品だ。協力した業者は環境分野での貢献をPRでき、投資家はエコ商品の売却益を期待できる。
今後も自然資源の経済的価値は上昇し、乱伐採された森林より木材の付加価値も高くなるだろう。生物多様性保全への投資は企業の戦略上も有効だ。【林田七恵】
◇すぐできる企業努力--国際自然保護連合(IUCN)チーフエコノミスト、ジョシュア・ビショップ氏 企業活動は生物多様性に間接、直接的な影響を与えている。サハリンの石油ガス開発では、セイヨウコククジラに悪影響があることが分かり、それを避けるために投資家が多額のコストを負担した。
問題回避にはどうすべきか。IUCNは、開発予定地の生物多様性に関する情報「IBAT(生物多様性統合アセスメントツール)」の策定にかかわった。その情報を活用してほしい。第三者機関による環境保全認証の取得も選択肢だ。
米ニューヨーク州の水道当局は、厳しい水質基準を作ったが、結果として本来の水質汚染対策よりずっとコストが安くなった。
企業は、今すぐに実施できる取り組みがある。事業が生物多様性に与える影響を計測し、開示する▽取り組み内容を広く知らせる▽行政に、どんな制度や規制が新たに必要かを知らせる--などだ。生物多様性に関連するリスクを減らし、ビジネスチャンスに転じるよう努力してほしい。