ID : 13709
公開日 : 2009年 10月26日
タイトル
COP10:識者に聞く /上
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新聞名
毎日新聞
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元URL.
http://mainichi.jp/select/science/news/20091026ddm016040024000c.html
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元urltop:
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写真:
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来年10月に名古屋市で開かれる生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)に向け、神戸市で「神戸生物多様性国際対話」(環境省主催)が開かれた。COP10では、現行目標の「2010年までに生物多様性の損失速度を顕著に減少させる」に代わる新しい目標の合意が期待されている。対話に参加した専門家の提言を紹介する。【丸山進、林田七恵】
◇新指標考えよう--国際自然保護連合(IUCN)上席科学顧問、ジェフリー・マクニーリー氏 新目標は、生物多様性の損失速度を鈍化させるだけでなく、もっと前向きで将来のビジョンを分かりやすく提示すべきだ。
国連の地球規模の生態系評価報告書によると、生態系機能の6割が劣化している。いかにコストをかけずに生態系を再生させるかが重要になる。
また、二酸化炭素を吸収する森林など、生物多様性の保全は、気候変動対策にも結びつくので、両者を連動させる視点も必要だ。
生物多様性は生物、遺伝子、生態系などさまざまなレベルで保全していかなければならない。目標を測定するには一つではなく、複数の指標が必要になる。既に蓄積されたデータを使って新たな指標を考えるべきだ。
生物多様性条約では、各国に国家戦略の策定を奨励している。日本は既に3次の国家戦略を策定した。こうした動きをもっと広め、各国が自国の状況に合わせて戦略計画を作ることが重要だ。
◇文化、信仰も活用を--国際鳥類保護団体「バードライフ・インターナショナル」アジア代表、クリスティ・ノザワ氏 都市で生活する人々が増えた。自然は身近な存在ではなくなり、自然保護区への訪問者も減った。日常生活と一体化した環境保護を実践するには、公の保護区の活用に頼るだけではもはや不十分だ。アジアでは古くから山岳信仰が根付く地域で山頂の環境は神聖なものとして守られている。日本でも、鎮守の森が役立っている。これらは自然保護区ではないが、文化や信仰などの価値観に基づき伝統的に守られている。こうした仕組みを活用してはどうか。
また、海洋の保護も遅れている。同条約第7回締約国会議(COP7)で、12年までに各国の排他的経済水域と外洋の10%を保護区に指定すると決議された。だが、指定面積は目標の10分の1未満の0・9%。現行の歩みでは目標達成は47年になる。民間の資金や手法を活用しながら、魚類の移動経路の解明や、絶滅の危機にある種や生息地域の適切管理が求められる。