ID : 13700
公開日 : 2009年 10月25日
タイトル
検証あきた平成大合併 自治の行方 第2部 悩める行政
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新聞名
秋田魁新報
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元URL.
http://www.sakigake.jp/p/special/09/jitinoyukue/jitinoyukue2_06.jsp
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元urltop:
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写真:
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由利本荘市鳥海町の市有林の山々を貫く林道や作業道。草がぼうぼうと生え、溝ができて車で通れない所が多い。同市鳥海町の林業に携わる男性が「旧町時代はすべての林道と作業道を町が草刈りし管理していたが、合併後はほとんど手を掛けてもらえなくなった」とぼやいた。スギ間伐のため山中に向かおうにも、林道が使えない。市総合支所に相談しても「予算がないのでできない」との返事ばかり。男性はあきらめ、草刈りを自主的に行っている。
同市は、東北6県の市町村の中で公有林(市有林、県有林)の合計面積は最大を誇る。間伐や森林造成、林道の維持整備など、市の2008年度の林業費は約3億6千万円まで縮小した。旧1市7町の合併前の04年度当時(合計額約16億6千万円)の2割ほどだ。
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予算不足で草刈りなどの維持管理ができず、荒れ放題の林道。この先へは車で進むことができない=9月8日、由利本荘市鳥海町 鳥海町地域は、合併前の04年度に255万円だった林道維持費が08年度は45万円まで縮小。同費の除草費用も、227万円から30万円に激減した。同町の林道は19路線、延長67・6キロ。市によると、この予算では4・5キロ(幅80センチ)ほどしか刈れず、“放置状態”と言われても仕方ない現状だ。小松秀穂・市農林水産部長も「林道など市民の目につきにくい所が取り残されているのも事実」とし、現状を改善する必要性を口にする。 市鳥海総合支所の担当者は「以前のように年1回は全林道を草刈りしたいが、今は予算内でやるしかない」と説明する。「林野は市の基本財産。先人が築いた林業事業を荒廃させることなく、育てていくのが自分たちの役割なのだが…」とも付け加えた。 合併した旧1市7町。かつては福祉のまち、教育のまちなどそれぞれ特色のあるまちづくりを進めてきた。旧鳥海町は林業振興に力を入れてきた地域の一つ。しかし、地域間の公平性を保とうとする市の施策が予算配分にも表れ、予算の平準化で各地域の個性が色あせていく危ぐも出ている。
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一方で、合併協議会で確認した「料金の低いところに合わせるよう努力する」とした公共料金の統一は進まずにいる。大きな開きのある水道料金をどうするかも、いまだ検討段階だ。現在、上水道か簡易水道を20立方メートル使用(4人家族の標準値)した場合の月料金で比較すると、最も高い東由利地域が4284円、最も安い松ケ崎地区が2415円で、差額は1869円。ばらつきがある下水道料金も、敷設工事の負担金(最大35万円)のあった地域と負担金ゼロでその分を料金に上乗せしている地域があり、料金統一が逆に不平等を生じさせる可能性もある。「検討を重ねているが、簡単にはいかない。今の財政状況では、料金の低い地域に合わせるのも難しい」と熊谷幸美・市建設部長。“平準化の余波”がさまざまなところで渦巻く。