ID : 13663
公開日 : 2009年 10月21日
タイトル
数字だけの議論は危険 具体的な努力の積み上げを
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新聞名
nikkei BPnet
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元URL.
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/column/20091019/102427/
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元urltop:
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写真:
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中国の排出削減策が意味するもの
12月にコペンハーゲンで開催されるCOP15(国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議)に向けて世界の環境問題に関する意識が急速に高まっている。各国が大きく動き出しており、中国を典型例として、地球温暖化対策に新たな踏み込みをみせている。
国連気候変動サミットで中国の胡錦濤国家主席は「中国は独自のやり方で、地球環境対策に貢献する」と講演した。中国は植林を進め、2020年までに森の面積を2005年より4000万ha増加させるという。
換算すると40万km2。約37.7万km2の日本の総面積よりも広い面積に植林をし、環境対策の柱にすると言い出したわけだ。これが、どの程度の二酸化炭素(CO2)削減につながるのか明らかではないが、米国でも森林吸収ファクターを重視し始めている。
森林ファクターを視界に入れるか否かで、温室効果ガス削減の数字は大きく動く。京都議定書で、日本は森林で吸収できるCO2を3%強まで認められているが、この数字のインパクトは非常に大きい。
今後は、国際的なルールも変わってくると考えられており、そうなれば、森林ファクターを抱えるいわゆる「農水省ファクター」の比重が増す。例えば、農地に手を入れ整備することによって、CO2の吸収量を高めることが考えられる。また、海洋吸収ファクターは、日本のような海洋国家にとっては大変重要だ。
鳩山由紀夫首相が宣言した2020年までに90年比で温室効果ガス(GHG)を25%削減するという目標に対して、少なくとも10%前後は農水ファクターで対応できるのではないかという試算もある。今後、COP15以降、環境問題に立ち向かうルールは、何をもってCO2削減ファクターとするかのせめぎあいだと思う。中国と米国を世界のルール作りに引き込んでいこうとするなら、CO2の森林吸収ファクターに象徴されるような要素をどこまで盛り込むかが重要になってきている。
GHG削減のルール作りは、異種格闘技のルールを決めるのに似ている。一定方向を目指していることだけは間違いないものの、その前の段階で中国は、いわばカンフーのルールを主張しているようなものだ。中国が森林吸収ファクターを強調してきたように、それぞれの国が、それぞれの事情を背負って、何をCO2吸収要素とするのかについて、これから大変な議論がなされなければならない。
日本は、単に大きな数字を持ち出すだけではいけない。このルール作りにおいて、何を日本の目標とし、どのファクターを盛り込むかについて、大きな発言力をもって踏み込む必要がある。