ID : 1432
公開日 : 2006年 8月 4日
タイトル
森林環境税 具体案カギ
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新聞名
中日新聞
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元URL.
http://www.chunichi.co.jp/00/tcg/20060806/lcl_____tcg_____001.shtml
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元urltop:
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写真:
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県の「県民協働森づくりに関する有識者会議」が七月三十一日、森林整備などの財源として、「森林環境税」の導入を福田富一知事に提言した。県はこれを受けて税額や使途の策定に取り組み、二〇〇八年度からの実施が有力視されている。全国的に同種の新税導入が進む中、クリアすべき課題にはどのようなものがあるのか。現在実施している十六県のうち、初の試みとして注目され、スタートから三年以上が過ぎた高知県のケースと比較した。 ■低価格と高齢化 「最大の理由は森林の荒廃です」。二〇〇三年度から全国初となる森林環境税を実施した高知県森林局は、導入の理由を端的に説明する。同県は県土の84%が森林で全国トップ。「その森が、林業従事者の高齢化や過疎化で間伐されなくなった」
本県でも状況は似ている。輸入材の増加などで、標準的なスギ丸太一本の価格は一九八〇年ごろの四分の一にまで下落。逆に六十歳以上の高齢者率は約15%から40%以上にまで増加し、手入れされない森が増え続けている。提言は、県内のこうした森林約三万ヘクタールを整備すべき対象と指摘した。
■地域通貨で報酬
だが、高知県が新税を実施した目的は、森林の直接的な整備だけではなかった。「県民に森への意識を高めてもらいたかった。だから、あえて一般財源から切り離して新税を作った」(同局)。
実際、高知県が整備対象とする一万五千ヘクタールのうち、〇四年度に新税で対応したのは約三百二十三ヘクタール。残りは国庫補助など従来の財源も使っており、同局は「新税そのもので、爆発的な整備を期待したわけではない」と話す。「むしろ、人々に森とかかわる機会を与えた成果が大きい」
新税の主要使途に、森林整備の民間非営利団体(NPO)などへの具体的補助を加え、チェーンソー購入や作業初心者への講習などを支援。間伐の報酬として地域通貨を用意するなどして、森を中心とした周辺地域活性化にも取り組んだ。
その結果、新税導入前には、県内に四つだった森林整備の民間団体が、現在では二十五団体の七百人にまで増えた。
■8割に問題意識
栃木県が今年四月から六月、県民の日イベントなどで行った千五百人アンケートでは、約八割が森林の荒廃を問題としてとらえているという結果が出ている。
これに対し、有識者会議の提言には、「県民全体で森林を支えていく」との理想を掲げる一方で、新税の規模や導入時期、具体的な使途などは盛り込まれなかった。
県は今後、シンポジウムや県民集会を通じて、森林問題や新税構想への周知を図るとするが、県民の高い問題意識に応えられる具体案づくりと発信が必要となっている。
<メモ> 森林環境税 荒廃した森林の整備やボランティア支援などを目的とした新税。現在、全国16県が同種の税を実施しており、3県が導入を決定している。徴税方式は、県民税に上乗せする超過課税方式が多く、税額・税率は個人で500-1000円、法人で5-11%程度。地方分権の流れの中、県の独自課税の代表的なものとして実施、検討の動きが広がっている。