ID : 13577
公開日 : 2009年 10月15日
タイトル
割箸が森林を救う
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新聞名
きままなe-日記
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元URL.
http://www.e-waribashi.com/wordpress/?p=251
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元urltop:
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写真:
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なぜ割箸が森林を救うことができるのか?結論を先に言ってしまうと、間伐材を丸太ごと使って割箸を大量生産する。そしてこの割箸を1人でも多くに人に使ってもらうのだ。現在、日本で使用されている割箸の96%が中国産である。
中国で生産が始まったのは今から約30年前である。当時はフィリピンやインドネシアの東南アジアの輸入割箸と岡山の松箸、そして北海道の白樺の割箸が、普及品割箸の大部分の需要を支えていた。吉野は杉、桧の製材時にでる端材を使用して生産をしており、高級割箸として棲み分けをしていたわけである。(注)東南アジアの割箸の材料は松脂を取った後のメルクシ松の廃材や建築材に不向きなグバスという低利用木材が使用されていた。
ところが中国で白樺割箸の生産が始まると、豊富な材料と安い工賃の人海戦術による圧倒的低価格と貪欲ともいえる研究熱心さで短期間に品質が向上し、瞬く間に中国産割箸は日本の割箸市場のシェアーを奪い、東南アジアの割箸は市場の舞台から消え去り、30年前には100件以上あった北う状況になってしまった。
地場の吉野高級割箸の方はどうかというと、やはり中国産の安価な竹割箸にシェアーを奪われ、生産も激減してしまい、割箸職人の若手の年齢が60代と言われるほど高齢化し、後継者もいない状況になっている。
長引く建築不況と外国産集製材の普及により国産丸太の製材自体が激減する中で、材料である端材も手に入りにくくなっている。何よりも端材を使った割箸の生産は手作りに近く、日本の需要を支えるだけの大量生産が出来ない。しかし、間伐材丸太をそのまま使えば割箸を大量に生産することが可能である。
幸いなことに、安価な中国産割箸が市場を席捲する厳しい環境の中で、国産割箸製造技術を現在まで守り続けてきた工場がわずかに残っている。
この間伐材割箸を使うことによって、現在の中国産割箸の偏った依存を解消できるし、日本国内の森林の整備もこれで解決できるというわけである。先にも書いたように、日本の森林は伐採しないといけないのに、伐採されないのが最大の問題だから、使い捨ての割箸として有効に使えば良いのである。
価格は中国産割箸より幾分高くなるけれど、日本の森林の整備が出来ることになれば、少々の価格差は外食事業関係者や消費者にも納得してもらうことができるだろう。また、森林の整備に税金を投入する代わりに、間伐材割箸に国や自治体の補助や協力をもらうことができれば、さらに価格を抑えることができる可能性が出てくる。
この間伐材を使った割箸はすでに生産を開始しており、販売も始まっている。生協の食堂や環境問題に関心のある外食店から使われ始め、4月から某コンビニエンスストアーでも行楽用割箸として採用されて全国の店舗の棚に並び始めた。
たかが割箸である。しかし、されど割箸でもある。このちっぽけで変哲もない木片は「もったいない」という精神から日本人が発明したすばらしい道具であり、日本人の精神がこの木片に凝縮されている。日本人の手先の器用さは多様な箸使いから来ているのはよく知られているが、手先の器用さは頭脳を発達させることも周知の事実である。我々日本人は杉の桶の技術と同じように割箸も素晴らしい木の文化の道具として大事にしないといけない。
このちっぽけな木片が日本の森林を育て、このちっぽけな木片によって祖先から受け継いだ森林という大切な財産を後世に残すことができるのではないだろうか。