ID : 3106
公開日 : 2007年 5月21日
タイトル
林業経営 “追い風”を生かしたい
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新聞名
読売新聞
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元URL.
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2007052102017745.html
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元urltop:
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写真:
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世界的な木材値上がりで国産材の競争力が上向き、需要が回復しつつある。森林の持つ温暖化ガスの吸収機能にも期待が集まる。この追い風を生かして林業の効率化や担い手の育成に努めてほしい。
日本が大量輸入しているロシア産丸太は乱伐がたたって伐採が制限され、中国の需要増も加わって価格が高騰、欧州材はユーロ高の影響で三-四割値上がりし、割安感の出た国産材の需要が増えてきた。日本の合板
加工技術の向上も間伐材利用を後押ししている。
二〇〇六年度の森林・林業白書は「国産材の利用を進める追い風が吹いている今が林業活性化の絶好の機会」と指摘し、活用を訴えている。
戦後に植林されたスギやヒノキは五十年以上を経過し、伐採期を迎えた。国は京都議定書で約束した温暖化ガスの削減目標を達成するため、六年かけて三百三十万ヘクタールの森林で間伐を行う。人手不足で手入れ
できなかった森林をたくましく育て、二酸化炭素を大量に吸収させる計画だ。
一九八〇年を境に産出額の減少傾向が続く日本林業への追い風であり、林業と木材産業の連携で森林をよみがえらせなければならない。
だが、林業の最前線では将来に希望すら持てない惨状が少なくない。九州では二〇〇〇年前後に伐採された人工林五千ヘクタールのうち四分の一が「再造林放棄地」。再植林費用まで賄えず荒れるにまかせたままだ。
高知県はじめ十六県は県民の理解を得て「森林環境税」など独自の課税制度を設け、保全費用に充てている。森林を維持するには、こうした知恵をもっと絞り出すことが必要だ。
林業経営者の自助努力も欠かせない。全国に九百以上ある森林組合は森林所有者からの依頼で間伐や、切った木の搬出、売却を請け負う。しかし、所有者の多くが地元を離れて手入れが行き届かず、林業農家の高齢
化も追い打ちをかけている。
そこで静岡県の富士森林組合は所有者からの依頼を待つのではなく、伐採量や売却価格、利益還元額などを記した計画書を作って所有者に直接働きかける方式に切り替えた。一般企業ならば当然の経営努力が、遅れ
ばせながら実を結び、森林に活気を取り戻しつつあるという。
慢性的な人手不足に悩む林業の再生は、零細農家や新たな林業従事者を束ねて経営を効率化する森林組合の地道な育成が何よりも優先する。
“緑の防人(さきもり)”として先導役を果たすべき林野庁は今、天下りの温床となっている緑資源機構の林道官製談合で揺れている。森林と同様、林野庁も健康体にしなければならない。