ID : 151
公開日 : 2006年 1月23日
タイトル
間伐材使った木製水路…花巻市・循環資源デザインネットワーク
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新聞名
読売新聞
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元URL.
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/challenge/ci_ch_05121501.htm
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元urltop:
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写真:
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岩手県花巻市の市道脇に設けられた木製の水路を、農業用水が勢い良く流れていく。水路用木材の原材料は、隣接する大迫町内で伐採された杉の間伐材だ。水路は幅約75センチ、最深部約30センチのV字
型。木材の表面にはこけが生え、のり面の植生に溶け込んでいる。
「コンクリートに比べ、景観にマッチしてるでしょう。自然にも優しいんです」。製品開発にあたったNPO(非営利組織)法人「循環資源デザインネットワーク」(花巻市)代表の田口義勝さん(43)は、こう強調する。
自然に溶け込む木製水路を前に、今後の活動を語る田口さん(岩手県花巻市で) 同ネット設立のきっかけは、コンクリート製品のメーカーに勤務していた田口さんが、自社製品に木材を組み合わせられないかと大迫町森
林組合に働きかけたこと。製品設計と加工製造を同社と組合が共同で行うことになり、2001年に団体を設立、木製水路のほか、ガード部分に間伐材を使ったガードレールなどを開発した。商品化した間伐材は、01年度
には420立方メートル分に上った。
また、夏休みには、地域の公民館で小学生を対象に巣箱づくりなどの工作教室を開催。その中で、森林組合職員らが森林の機能や役割を説明してきた。「林業は行き詰まっており、企業や市民など横の連携で打開する
必要があると考えた」と、同組合の関田良一組合長(76)は話す。
しかし、03年4月、田口さんが勤める会社が、公共事業の減少による資金繰りの悪化から廃業。同ネットも解散の危機に立たされたが、田口さんの知人がいるコンクリート会社との連携で乗り切り、同年8月には、NPO
法人化した。
同年度こそ56立方メートル分まで販売が落ち込んだが、岩手県が使用促進に努める「県再生資源利用認定製品」に木製水路など3種の製品が認定されたことなどから、04年度は100立方メートル分に回復。今年度も
すでに140立方メートル分を超えた。
こうした取り組みについて、同県緑化推進課は「新たな付加価値を生み出す試み」と高く評価する。間伐材の利用促進は、県政の課題でもあるからだ。
岩手県の総面積(約152万8000ヘクタール)のうち、森林は77%の約118万ヘクタール。北海道に次ぐ“森林国”だが、間伐が必要な人工林約25万ヘクタールのうち間伐済みは7万ヘクタール弱しかない。一方、19
80年に365億円を超えていた県の木材生産額は、外国産材の輸入で02年には117億円に落ち込んだ。70年代に7000人近かった林業従事者も02年には2400人弱に減った。
同課によると、こうした林業の落ち込みは森の荒廃を招き、土砂崩れの危険性が高まるほか、二酸化炭素の吸収量低下や動植物への悪影響もあるという。
田口さんは同ネット設立前後、未間伐の杉林に入った際に、幹の細い杉が乱立して光が遮られ、真っ暗だったことが忘れられない。草も生えない表土は雨で土が削られ、根が見えていたという。
「『人が、どう森を守るのか』を真剣に考えなくては、と痛感した」と田口さん。「間伐材の利用促進もその方策の一つ。さらに取り組みを充実させたい」と意気込んでいる。