ID : 1267
公開日 : 2006年 7月 1日
タイトル
日本の神芝居:「老人と桜の樹」
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新聞名
大紀元
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元URL.
http://www.epochtimes.jp/jp/2006/07/html/d80206.html
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元urltop:
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写真:
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日本の有る所にある男が流れつき棲み付いた。元々、村人とは面識がなく余所者であるため、誰も相手にせず、男は村の端にみすぼらしい庵を結び、痩せた土地を耕しては、自分一人分の食い扶持を上げる
晴耕雨読の生活を送っていた。
男は或る時、天に向かってつぶやいた。「ああ、淋しい、誰か助けてくれないか?もっと周囲が賑やかであれば・・・」すると、数日して見知らぬ老人が訪ねてきた。見ると、手に小さな苗木を持っている。「それは何の木
ですか?・・・」男が尋ねると、老人はそれには答えず「私を呼んだのはあなた・・・最初は楽しく・・・末節には・・・」とだけ言い残し、苗木を男に渡すと静かに去っていった。
男は訳もわからなかったが、兎にも角にも老人の苗木を植え、大切に育て数年が過ぎた。すると、春には満開の桜花を見るようになり、村人の間で瞬く間に評判になった。村人たちは、男と伴に酒を酌み交わし、帰りに
はお礼にと農具やら苗木やら栽培技術などを置いていったので、男は知らぬ間に裕福になっていった。
そんな万事順調な或る日、噂を聞きつけた村長が娘を連れて男の元にやってきた。娘の器量を見て有頂天になった男は、分をわきまえず、再び天につぶやいた。「どうにかしてあの娘を私のものにできないか・・・」。し
かし老人は、再び男を訪れない。男は立派な新居があれば、娘が輿入れすると思い、新居を改めることにした。
しかし、村には立派な新居を建てるための梁とする樹木がなく、男ははたと困った。「どうしたら梁を調達できるか?」・・・見ると、眼前に堂々と育った桜の樹がある。男は意を決すると、桜の樹に斧を入れ、一思いに切
り倒すと梁にして新居にしてしまった。
ほどなくして村長の娘が輿入れし、男が幸せな日々を送っていた時、くだんの老人が訪ねてきた。「桜の樹はどうした?」・・・男はくだんの経緯を話し、幸せな結婚ができたことを報告し、老人に感謝の意を述べたが、老
人は首を振りながら、「人に天の数あり」とだけ言うと、また静かに去っていった。
老人が去ってからしばらくして、イナゴの害、日照りの旱魃等の天災が相次いで村を襲い、夜盗まで発生して、村は存亡の危機を迎えた。村長は男の元に来て、また相談した。「どうしようか?」・・・男は残った切り株に目
を遣り、「では臼を作って餅をつき、それを天日で干して保存食をつくりましょう」と進言すると、残りの切り株を地面から引き剥がしてしまった。
村人が最後に希望を託して餅をついている最中、今度は中央から官吏が来た。「税収として、この餅は中央が徴収する」。そう言うと、官吏たちは村のなけなしの餅をすべて持ち出した。あくる年も、またあくる年も村か
ら天災が去ることはなく、娘と離縁した男はまた放浪の旅に出ることになったという。