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地に足のついた二酸化炭素(CO2)削減は、化石燃料への依存を減らし、自然資源を大事に使うことから始まる。森の今を報告する。
スギ、ヒノキの山々に、奇妙な契約話が波紋を広げた。面積の94%が山林の大分県佐伯市宇目地区で昨年、「山林(CO2吸収量)の賃貸借契約書」が出回った。
「日本森林環境」という会社が山林所有者から「樹木のCO2吸収量確保能力」を賃借し、CO2排出量を抑えたい企業に再レンタルする仕組み。同社代表(53)と同地区出身の大分市の機械整備会社社長(61)が、様々
な人を介して山主らに話を持ち込んだ。
約20か所、計60ヘクタールの山を持つ小野宗教さん(68)は、3月に契約を結ぶ予定だった。
高校卒業後、1人で山仕事を続けてきた。小型パワーショベルで山を傷つけないように細かな作業路をつけ、間伐をして回る。年収300万円。年1ヘクタール当たり1万円の賃貸料が示され、年60万円は「結構大きい」
と考えた。
約30ヘクタールのスギ山を持つ高山可朗さん(75)は昨年10月、電器店を経営する知人に同じ話を持ちかけられた。「もっと高くなるかも。でも自治体が行うのがスジでは」と、様子を見ている。
◆ポスト京都でルールどうなる◆
契約は一転、保留になった。機械整備会社社長によると、大分県だけで計780ヘクタール分、13人の山主が必要書類をそろえ、準備をすませた。東京のコンサルタントが企業に橋渡しする運びだったが、関係者間で
価格や条件の調整がつかなかった。社長は3月、「法律や規則で森林吸収の基準が明確になるまで、凍結したい」と山主らに説明し、迷惑料として2万円ずつ払った。
「日本森林環境」は法人登記すらしていない。代表は「国内排出量取引が始まると予想し、契約書の文面を練った」と明かした。
京都議定書により、日本は温室効果ガスを2008~12年に1990年比で6%削減する。うち6割の3・8%は、森林吸収でまかなう計画だ。政府が森林管理を適正化し、国全体の森林での吸収量を確保する。制度上、個
々の山林の吸収量が売買され、企業の排出削減に充てることはできない。
しかし、これは京都議定書期間の話。現在進む「ポスト京都」の国際交渉で、森林吸収のルールがどうなるかはわからない。様々な憶測をもとに、新ビジネスを探る人々がうごめく。
◆山林自体の売買も活発化◆
環境省は3月、森林吸収量をCO2トンで表し、売買できる仕組みを作った。買った企業はPRなどに使え、公有林の吸収量を売った自治体は、山村振興に取り組める。申請を受け、現在、計画の審査が進む。「2013年
以降は、森林吸収量を企業の排出削減に使えるようになるかもしれない。それをにらんだ環境整備という側面もある」(小林紀之・日大法科大学院教授)という。
山林自体の売買も活発化している。山林売買に詳しい不動産業者(51)は「今のうちに安い山を獲得し、森林吸収などのルールが決まるのを待とうと動く企業がある」と話した。
国産材価格は下がり続け、山主に入る価格は、50年前の半分以下だ。「サラリーマンが50年前より安い賃金で働けますか? 金をもっと山村に回してもらわないと」。小野さんは、契約話への期待を捨てていない。 +
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