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ID : 12261
公開日 : 2009年 6月17日
タイトル
刊行:新作『神去なあなあ日常』 三浦しをんさんに聞く
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新聞名
毎日新聞
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元URL.
http://mainichi.jp/enta/art/news/20090618ddm014040133000c.html
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元urltop:
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写真:
 
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 林業の世界を舞台にした長編小説『神去(かむさり)なあなあ日常』(徳間書店・1575円)を、三浦しをんさんが刊行した。都会生活から一転、地方で山仕事をすることになった青年の戸惑いを軽妙に描きな がら、現代のさまざまな問いを投げかけてくる。【内藤麻里子】
 ◇いまどきの若者が出合った林業、軽妙さの中に流れる問題提起
 林業を題材に選んだのは、亡くなった祖父が三重県で従事していたから。活況を呈していた昭和30年代の仕事の様子も聞かされていた。「でも当時すでに林業は斜陽で仕事も減り、私の目には祖父は遊んでいるよう にしか映らなかった。林業とはどんな産業なのか知りたいと思ったことがきっかけです」
 もともと芸能や職人、研究者といった専門職への関心は並々ならぬものがある。雑誌『yomyom』で靴職人やフラワーデザイナーら、さまざまな分野のプロたちとの対談連載をし、長編小説『仏果を得ず』(07年)で文 楽の世界を描いた。
 「この人たちは自らのオリジナリティーを追求することとは別に、いいものを作り続けるために次の人が受け継ぐと信じ、次世代への信頼感がある」。現代は個人主義の時代。「いかに自分をアピールするか、自分が傷つ かないようにふるまうかが大事。個人はかけがえのないもの。でも力を合わせたり、他の人のことを思って何かするという彼らのようなあり方が、人間の本来かもしれない」。そんな人間関係が生きている一つの世界とし て林業に分け入った。
 主人公は平野勇気、18歳。高校の卒業式当日、急に三重県の神去村に就職口が決まった。携帯電話も通じない山奥で、山仕事に放り込まれる。当初は脱走も企てる。
 「主人公は流される若者にしたかった。就職や結婚などの目標を設定され、駆り立てられる感じが嫌。流されていてもいいじゃん、と思う。いつか目的は見つかるかもしれないし、焦る必要はないんじゃないかな」
 積もった雪を払う「雪起こし」、植林の下準備「地ごしらえ」--。季節と共に作業は進む。山しかないから山仕事をする。それだけの姿が頼もしく力強い。自然と共に暮らす日常をつづるが、今はやりのエコとは一線を画 した自然がここにあるという。「お金をかけて快適な生活をしたつけを『エコ』といって払っているわけですから」
 現代に対する三浦さんのアンチテーゼが一貫して流れているが、物語はコミカルに紡がれる。破天荒な先輩、ヨキに振り回されつつ、「こんなのありかよ」と仰天する出来事の連続。
 「書き終わった後、三重県に取材に行った。小説では登場人物の性格を誇張しすぎたかなと思ったけれど、まだぬるかった。実際、林業に従事している人たちはもっと個性豊かだった」と笑う。「熱心に一つのことに取り 組んでいる人は言葉が豊富でおもしろい。仕事とは死ぬまでの時間の使い方。それをどう自分の中で位置づけて、どう取り組んでいくかですね」
 神去村は架空の村。方言も大半、自らで作り、しをんワールドができ上がった。「この小説を読んで、少しでも林業っていいなと思ってくれればうれしい。アイデアと熱意と少しの行政の手助けがあれば、産業として先が あります」
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 ■人物略歴
 ◇みうら・しをん
 1976年、東京生まれ。2006年、『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞
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