ID : 12033
公開日 : 2009年 6月 7日
タイトル
「緑のオーナー」提訴 国のほおかぶりは許されない
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新聞名
愛媛新聞
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元URL.
http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017200906080662.html
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元urltop:
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写真:
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林野庁の「緑のオーナー」制度の元本割れ問題は、司法の場で国の責任が追及されることになった。愛媛など20都府県と海外の契約者75人が、損失分などの損害賠償を国に求める初の集団訴訟を大阪地
裁に起こした。
国は損失補てんはしない方針をすでに決定済みだ。多くの契約者にとっては救済の道が閉ざされてしまっている。提訴は当然だろう。
弁護団は国の説明義務違反を追及する方針だ。裁判では違法性だけでなく、制度の是非や国の責任についても踏み込んでもらいたい。
「緑のオーナー」制度は、国民から国有林育成の出資金を募り、成長した立木の販売代金を国と分け合うというものだった。1口50万円(一部は25万円)で1984―98年度に募集し、林野庁は8万6000の個人、団体か
ら約500億円を調達した。
しかし、99―2006年度に販売した507カ所の立木の販売価格は1口当たり平均33万円。この期間の約1万の出資者の95%が計約20億円の損失を被っている。原因は木材価格の低迷だ。
出資金は間伐や下刈りの費用に充てられた。制度のネーミングから受けるイメージもあったのだろう。「森林の保全に役立つなら」と契約した人も多かった。
隣の香川県では中学校の生徒会が、牛乳パックや古紙の回収益金を契約金に充てた。当時の生徒会は「資源リサイクルで森を守ろう」と全校で取り組んだ。林野庁は多くの国民の善意や夢を利用し、結果的に損失を与
えてしまった。その責任は重い。
制度発足から間もなくいゆるバブル経済になり、日本中が投資ブームに沸いた。制度が森林保全の目的から外れて、株や土地取引と同様の投機になっていなかったか。また投機目的の募集をしなかったか。いま一度検
証してみる必要がありそうだ。
公共的な投資対象であることを考えると、林野庁は一般の金融商品を上回る説明責任を負っていたといえる。にもかかわらず、当初の出資の募集パンフレットには投資リスクの記載がなかった。
未記載は損失補てんを求める根拠にもなっている。林野庁は「必要な説明は行ってきた」としているが、重大な手抜かりだ。
制度が始まる以前の70年代から国有林野事業はすでに悪化していた。また木材価格も外材に押され下落していた。国民の資金で林野事業の赤字を埋めようとしたのではないかとの疑念さえ浮かぶ。
国はいまだに出資者への十分な説明もしていない。国民に損失を与えながら、ほおかぶりするような対応は許されない。提訴にかかわらず国は従来方針を見直すべきだ。