ID : 11833
公開日 : 2009年 5月26日
タイトル
持続可能な木材調達をめざして 認証制度を駆使する住友林業
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新聞名
nikkei BPnet
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元URL.
http://premium.nikkeibp.co.jp/em/report/157/index.shtml
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元urltop:
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写真:
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林業と生物多様性の共存を狙う
生物多様性が企業活動に直接かかわる業種の一つが、木材を森林から調達する林業だ。木造注文住宅をはじめ、山林事業や木材・建材事業を手がける住友林業では、早くから生物多様性の保全に取り組んできた。
約4万ヘクタールある社有林では、まだ、『生物多様性』という言葉が一般的ではなかった1990年頃から、木材生産だけでなく生態系の保全を行ってきた。
「1992年にはリオ宣言や森林原則声明などがあり、生態系保全への関心が次第に高まってきた頃でもありました。その後、生物多様性という言葉が一般的になってきたこともあり、2006年にはこれまで取り組んできた内
容を『生物多様性保全の基本方針』としてまとめました」と語るのは、住友林業 山林環境本部山林部の寺澤健治グループマネージャー。
この基本方針は、「宣言のようなもので、具体的な取り組みを示したものではない」(寺澤グループマネージャー)が、これに基づき、生物多様性に富んだ水辺林の保護や社有林での動物のモニタリング、希少種の保護な
どの取り組みが進められている。
水辺林については、「河川の岸からおおむね5m以内の人工林では、皆伐後は広葉樹に戻したり、皆伐ではなく間伐を行う場合には広葉樹を残す」などの基準を適用。動物や鳥類のモニタリングの結果は、伐採を行う際
にどの程度の規模であれば生物の多様性を保持できるかといったデータのフィードバックに今後役立てるという。
希少種の保護については、各自治体が発行するレッドデータブックに基づいて作成したリストを現場に配布。また、希少種に詳しい地元の人を招き、実際に森林を歩いて調査をするなどして、皆伐や林道をつくる際な
どに希少種が発見されれば、専門の研究機関に相談するなどの配慮をしている。
「本来、社有林は木を切り出して木材調達を行うための場所。本業である林業経営をしながら、いかに生物多様性を維持するか。そのための指針が、この『生物多様性保全の基本方針』です」(寺澤グループマネージャ
ー)
■1990年頃から生態系の保全に着手
社有林における生物多様性保全に対する考え方
1.生態系の多様性 自然公園法などに指定された厳格な保護地域は法律に則り適正に管理する。それ以外の区域は、特に皆伐作業を行う場合にその面積を限定することにより森林の連続性に配慮する。
2.種の多様性
天然林について、拡大造林などの樹種転換を伴う生態系に大きな影響を及ぼす極端な施業を行わないことにより、森林に存在する種数の減少を防ぐ。希少動植物の保全については、あらゆる作業において、レッドデー
タブックを活用し、その保護に留意する。
3.遺伝的多様性
遺伝子レベルの変異とそれを維持するための個体数の維持が問題となるが、この分析は容易ではなく、行政や公的機関が実施しているモニタリング調査の結果が存在すれば、それを注視するなどを、今後の取り組み課
題としたい。
1990年頃から社有林を中心に生態系の保全に取り組んできた住友林業は2006年、これまでの取り組みをまとめた『生物多様性保全の基本方針』を発表した