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ID : 11702
公開日 : 2009年 5月15日
タイトル
印刷用に採用が進む間伐材 コピー用紙の配合は1割が限界
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新聞名
nikkei BPnet
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元URL.
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/report/20090507/101361/
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元urltop:
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写真:
  複数の写真が掲載されていました
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環境に配慮した紙の原料として間伐材が注目される。東海パルプが印刷用紙にスギやヒノキの間伐材を最低でも10%以上、配合して商品化。三菱製紙はアカマツなどの間伐材を生かした印刷用紙を商品化 している。
 今年2月、国などに環境に配慮した製品の購入を義務づける「グリーン購入法」の調達基準が改正された。コピー用紙は古紙配合率100%の再生紙を最優先で調達するが、森林認証材や国内の間伐材などを最大30%ま で使う紙も調達の対象に認めた。
高強度の紙に適した針葉樹 繊維の特性で用途使い分け
 ところが、製紙業界はコピー用紙に間伐材を使うのは簡単ではないと主張する。国内の間伐材のほとんどはスギやヒノキなどの針葉樹。一方、流通するコピー用紙の原料はユーカリなど広葉樹の輸入材が多い。同じ木 でも紙の性質が違ってくるという。
 針葉樹は、セメント袋に代表されるクラフト紙や段ボール紙など強度が必要な紙に使われてきた。繊維が太く長いのが特徴で、太さは50μm(μ:マイクロは100万分の1)、長さは3~5mm程度。建材向けに伐採されたス ギなどの端材は、こうした紙の原料に使い回されてきた。
 一方、広葉樹の繊維は太さ20~30μm、長さ約1mmと細く短い。粒の細かい繊維を寄せ集めて紙を作れば、大振りな繊維を使うよりも緻密でムラがなく、表面が滑らかに仕上がる。緻密な紙ほど繊細な印刷に向き、滑ら かになるほど高速のコピー機でも用紙が詰まりにくい。
 その上、針葉樹には水分を吸収して縮みやすいという弱点がある。紙が水を吸うたび縮むようでは、水を使うオフセット印刷に向かない。オフセット印刷は雑誌や包装などに幅広く使われる印刷方式だ。強度が求められ る場合は印刷用紙にも針葉樹が配合されるが、収縮性を考慮すると配合率は10%程度が上限とされる。製紙業界は針葉樹の特性を見極め、限定的に使い分けてきた。
 そんな中でも東海パルプは2002年から、針葉樹の間伐材を10%以上配合した封筒や名刺用紙、ファイルの表紙用紙などの生産を開始した。

左は東海パルプの間伐紙を使った環境報告書。下は名刺。間伐材を使った製品として全国森林組合連合会が認定したマークを表示している
 現在は主に静岡県の森林組合が伐採したスギやヒノキの間伐材のチップを購入し、古紙に間伐材を最低でも10%以上配合した印刷用紙を製造する。
 同社の「間伐紙」製造の流れはこうだ。間伐材を破砕して作ったチップを薬液と混ぜて大型の釜に入れる。110~160℃の蒸気で2~3時間かけて蒸し、チップの繊維(セルロース)をその他の成分と分離する。この工程 を「蒸解」と呼び、繊維の塊を「パルプ」と呼ぶ。
 蒸解の後、パルプを叩解機に投入。多数の刃を取り付けた回転する円盤と固定した刃で叩き合わせてすり潰す。繊維を毛羽立たせて絡まりやすくすると紙の強度が高まる。
 ここで間伐材パルプと古紙パルプを混ぜ、抄紙機に投入する。抄紙機の網(ワイヤー)にパルプをシート状に載せて脱水した後、フェルトのベルトに移し、上から圧力をかけてさらに脱水。熱で乾かすと紙になる。
●間伐剤を使った紙の製造工程
[クリックすると拡大した画像が開きます]
 製造工程は他社も共通だが、東海パルプ生産技術部の浅見明彦部長は、間伐材を使いながら印刷に適した紙にするため、「叩解や抄紙機での脱水の度合いを調整する」と話す。
 叩解は紙の強度だけでなく、繊維の長さをそろえることで紙の緻密さも調整できる。叩解に使う刃の形、円盤を押し付け合う圧力や温度、回転数を細かく設定する。叩解の度合いを上げるほど緻密でムラなく、滑らかに 仕上がる。抄紙機でもプレスの圧力を高め、回数を増やすほど紙の緻密さや滑らかさが増す。こうした調整で針葉樹パルプの欠点を補う。
 ただし、間伐紙の価格は他の紙の1.5~2倍。森林の間伐には国や自治体から補助金が出るが、間伐材を森からチップ工場へ搬送する燃料代や人件費までは賄えない。搬送コストが間伐紙の価格を押し上げる。
 企業は高値でも、「林業育成に役立つ間伐材が配合されている」という「環境価値」を認めて採用する。「だからこそ配合率の適正表示に配慮し、間伐材を他のチップと区別して管理する仕組みを作った」と、東海パルプ の池谷修取締役は胸を張る。

東海パルプは独自の仕組みで間伐材の配合率を管理している。間伐材チップだけを使って仕上げたパルプをシート化して、間伐紙を製造する時まで他のパルプと区別して保管している
 同社では間伐材パルプの製造を、年に2~3回の蒸解釜の洗浄後に運転を再開する時に限定。きれいな釜に間伐材専用サイロで保管したチップを投入して、他のチップの混入を防ぐ。工程ごとの間伐材投入量と生産 量はすべて記録し、保管している。
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