ID : 1156
公開日 : 2006年 6月10日
タイトル
シカ被害とスギ花粉で対策を練る、東京の森林問題
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新聞名
ライブドア・ニュース
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元URL.
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__2061677/detail
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元urltop:
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写真:
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東京都の森林荒廃が深刻化している。間伐などの森林整備の遅れや、伐採後の放置によって裸山が増えているほかに、近年急増したシカによる食害や踏み荒らしなどの被害も著しい。さらに、首都圏に住
む4人に1人が花粉症患者であると言われ、05年春には過去最大のスギ花粉が飛散するなど、東京都の森林整備は急務の状況だ。
森林問題は地球温暖化問題と密接な関係がある。05年2月の地球温暖化に対する京都議定書で、日本は二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を90年に比べ6%削減することが義務づけられた。そのうち3.9%を森
林による吸収量で確保する目標が立てられている。東京都23区部と市町村における森林面積は、約5万3000万ヘクタール、その林野率は30%で、人工林率は59.1%を占め、森林整備は環境と温暖化対策のために欠か
せないといえる。
また、森林は水と密接なつながりがあり、森林の豊富な東京都西部の奥多摩町、檜原村、青梅市などは、都民の水源地として重要な役割を担っている。つまり、森林整備は、山肌を守り、豊富な地下水を蓄え、二酸化炭
素を吸収し酸素を作ることに大きく貢献するということだ。
近年、森林問題で大きく取り上げられているのが、シカによる被害だ。農林業におけるシカ被害が顕著になってきたのは93年ごろからで、奥多摩町では地元猟友会に委託して、シカの捕獲に乗り出した。そもそも、1945
年当時の奥多摩町の雲取山周辺だけに生息が限られつつあったニホンジカを、1976年に保護を始めたのをきっかけに、その生息数が増え過ぎてしまった。その生息地域も、青梅市、檜原村、八王子市まで拡大している
。
そのニホンジカは雄と雌は別々の群れを作り、交尾期の秋に雄同士が争い、交尾した雌は翌年の初夏に通常一頭の小鹿を生む。保護を受けたシカはその数を年々増すと同時に、生息地近隣の畑を荒らし始め、また、
人工林の伐採後に植えた苗木を食べてしまうなどが報告され始めた。シカ被害によって荒廃した山肌は、雨が降るとすぐに土砂が崩れるなど、現在では深刻な問題に発展している。
04年度から対策として、奥多摩のシカの「有害捕獲」に加え、「特別捕獲」と呼ばれる「有害鳥獣捕獲」の実施が始まった。東京都が全額助成する04年度の「特別捕獲」は166頭で、延べ558人の東京都猟友会の会員が、2
7日間の出猟が行われた。また、東京都と市町村が半々ずつ費用を負担した同年度の「有害捕獲」は260頭で、延べ1036人の東京都猟友会・奥多摩支部の会員が、73日間出猟したと報告されている。
森林被害調査(04年5─10月)によれば、多摩の森林の約4割が植生被害を受けているほかに、土砂が流出し岩山化が始まっている森林が、オオダワ、水根沢、雲風呂谷の3カ所で確認された。都の環境局、産業労働
局、建設局、水道局が、緊急対策として600頭のシカ捕獲数の目標を掲げ、土砂流出防止のための治山治水工事の計画、防シカ柵などを設置した植生の保護、山梨県や埼玉県との連携によるシカの捕獲強化を上げてい
る。また、05─06年度にかけて、適正な生息頭数を設定するなど、シカ保護管理計画の策定準備が行われる。
一方、都の06年度総合的花粉対策は34億円の予算が立てられている。長期的な花粉発生源対策として、多摩地域から発生するスギ花粉量を、10年間で2割削減する目標だ。多摩地域のスギやヒノキの人工林を、伐採
した木材を公共事業や住宅に活用するなどの「生産型森林」と奥山などにおける自然環境を重視した「保全型森林」に区分して、それぞれのアクションプランを実施する。
「生産型森林」のアクションプランは、10年で1200ヘクタールの伐採・搬出などを計画し、「保全型森林」での同プランは、小面積伐採と広葉樹植栽を10年で2000ヘクタール行う予定だ。
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