ID : 10884
公開日 : 2009年 3月15日
タイトル
林業公社って必要? 長期債務総額1兆1794億円
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新聞名
MSN産経
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元URL.
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090317/biz0903170131000-n1.htm
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写真:
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都道府県が設置する全国40の林業公社の長期債務が平成20年3月時点で総額1兆1794億円に上り、返済困難になっていることが、農林水産省と森林整備法人全国協議会の調査で分かった。
莫大(ばくだい)な借金はさらに増加傾向にあるが、国は「誰も手入れしない森林を公社が管理し、荒廃を防いでいる」と存続を主張している。しかし、都道府県では「これ以上、赤字を増やされてはかなわない」と、解
散する動きも広がりつつある。
林野庁によると、林業公社は、民有林を管理し、育てた木材を伐採・売却して収入を得ている公益法人。設立時の資金は都道府県が出資しているが、原則として自治体の収支とは別会計で、木材収益で独立経営を行
うことになっている。
しかし、最近では収益が伸びず、多くの公社では運営費を借金で穴埋めしている。原因は、木材価格の長期低迷。外国から安い木材が流入したため、国産木材の価格は昭和58年ごろのピーク時と比べて7~8分の1程
度になった。その結果、公社の木材収益は落ち込み、債務が膨らんだ。
現在、長期債務がないのは40公社のうち2公社だけ。34公社は債務が100億円を超え、多くの公社は「現状の木材価格では、とても返済できない債務レベル」(林野庁)という。2つの林業公社を持つ滋賀県では債務
の合計は1080億円にもなる。 債務のほとんどは政府系金融機関と設立主体の自治体からの借金。返済見通しのない公社に、多くの公費がつぎ込まれている形だが、それでも国や多くの自治体は存続を主張する。
その理由を林野庁は「誰かが森林を管理しなければ、自然環境悪化や山崩れなどの原因になる」と説明する。存続派の自治体には天下り先の確保という思惑もありそうだ。
国は、政府系金融機関からの貸し付けの返済期間を20年延長。年間20~50億円の税金を投じ利子支払いも補助し、政府系金融機関に新たな貸し付けも行わせ、存続を後押ししている。
これに対し、一部の自治体では数年前から「このままでは債務が膨らむばかり」と、公社解散を求める声が高まっている。岩手と大分両県は計約820億円の債務を抱えた公社を実際に解散、神奈川県も22年度には解
散する方針だ。各県の担当者らは「公社を解散し、自治体が直接、民有林を管理すれば、山は荒れないし、人件費などの費用を削減できる」と主張する。
ただ、公社を解散しても借金が消えるわけではなく、自治体が背負わなければならない。自治体が貸し付けた資金も返済されない。それでも神奈川県の担当者は「返済のあてがないなら、今でも実質は県の借金のよう
なもの。公社という別会計組織に借金を計上して、隠れ借金になるなら、解散した方が財政も健全化する」と話している。