「企業の森」は和歌山県などが積極的に誘致し、環境配慮の企業イメージをPRする場として大手企業や労組などが参画している。県林業振興課によると県内では初めて。
町、町森林組合と協定を結ぶのは注文住宅建築の藤島建設(本社埼玉県川口市、佐藤善之社長)と金網製造などの小岩金網(本社東京、西村専次社長)の2社。
首都圏で業績を伸ばす藤島建設は、同町内の製材会社の集成材を使っている縁があった。同町葛巻のグリーンテージくずまき北側の山林約6ヘクタールを近く購入。カラマツ植樹による再生のほか、ドングリやツツ ジの憩いゾーンにする。
顧客らを招いた植林や地域住民との交流会を展開。飛田美正専務は「『産地が見える住宅』を実践する場になる。葛巻とがっちり手を結んでいきたい」と企業メリットを説く。
小岩金網は、西村社長が私費で同町江刈の約7ヘクタールを購入、町森林組合の組合員でもある。組合を主体に地域住民らで組織する里山森林整備実行委が県助成の「森からの新ビジネス展開事業」を行う場とし て「企業の森」を提供する。
同実行委は、間伐材の木炭を活用した土壌改良の実証や、ヤマブドウ、山菜類の栽培を計画。同社の高橋求顧問は「荒廃した山からビジネスを生み出す活動を見守ってほしい」と話す。
同町は面積の86%が森林で大半は民有林。町の政策で進めたカラマツ植林から約40年を経過し伐採の適齢期を迎えているが、多くは荒廃し、伐採後の保全も十分に行われていない現状だ。
町は本年度「森のサポーター」を募る寄付条例を制定。「くずまき高原環境の森(仮称)づくり事業」を本格化させる考えで、企業の森を一つの柱と位置づける。
町農林環境エネルギー課の近藤勝義課長補佐は「交流人口拡大や町民の意識高揚にも効果が出てきそうだ」と期待。町森林組合の竹川高行参事は「町の魅力を発信し、葛巻を企業の森のメッカにしたい」と夢を膨ら ませる。
【写真=「企業の森」として購入する山林を視察する藤島建設と葛巻町の関係者】