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ID : 9880
公開日 : 2008年 12月16日
タイトル
バオバブの木に心なごむ
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新聞名
朝日新聞
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元URL.
http://www.asahi.com/car/africa/TKY200812150140.html
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元urltop:
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写真:
  写真が掲載されていました
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12月10日(水)、晴れ。キバハから東へ、たった45キロ走れば首都ダルエスサラームだが、日程を急ぐことにして次の目的地イリンガへ向かう。沿道はタンザニアの顔ともいえる「サイザル麻」の広大な畑が 延々と続いていた。就業率79.1%(2003年)という近隣諸国のどこよりも高いこの数値は、タンザニアが古くから農業に力を注いでいることを物語っている。
 そして、昨日案内された研究農場にあった「ジャトロファ」という植物が付ける実(2~3センチ大で、1本の木から約5リットルの油を抽出する)を精製して、バイオ・ディーゼル油などを得るという新しい農業の出現も、 タンザニア農業への新たな期待を高めている。
 タンザニアの(いや、アフリカ中の)山林は、薪と炭に頼った生活のために燃料として伐採され続け、どこもかしこもはげ山状態だ。ジャトロファ農場の推進には、伐採を食い止め農業の振興を図りながら、同時にCO2排 出削減にもつなげていくという一石三鳥の期待が込められている。事業の主要推進メンバーの1人のバンドゥーカさんは、内外で資金協力を募集中だ。
 国道1号線を西に向かうと、途中「ミクニ・ナショナル・パーク」という国立公園を通過する。ここのあたりからアフリカ名物のバオバブの大木がたくさん見られるようになる。あの屋久島の縄文杉に優るとも劣らない、幹の 周囲が5~6mはあろう巨木が、そのぶっとい幹にはあまりにも不釣り合いな小さな枝と葉っぱをつけ森の中に立っている姿は、なんとも滑稽で心なごむものだった。
 渓谷沿いにあった「クロコダイル・キャンプBAR」という看板をみつけて一休みする。ワニは見られるか?とたずねると「日中は底にもぐって出て来ないよ」と、よくありそうな答が返って来た。
 生のバオバオの木の幹を柱に利用して、天井に葦で組んだ屋根をつけただけの野外BARには、アイスクリームをはじめ、ビールや炭酸ドリンクなど欲しいものがなんでもあって驚いた。聞けば、オーナーはドイツ人で ある。夢のような暮らしをこんな場所で実際にやってのけてしまうのも西洋人だ。
 夕闇の迫る国道、午後6時、丘の上のイリンゲの街に着く。標高は1500m。朝までのキバハの街と違いなんとも涼しいのだった。本日の走行420キロ。

 12月11(木)、晴れ、午後雨。朝7時50分、予定より10分早く出発できた。旅も1カ月半を過ぎると、隊員たちの呼吸も自然と整ってくる。本日の予定距離は360~380キロ。所要時間は7時間が目標だが、途中、何が あるかわからないのがアフリカの道。あるはずの道がなかったり、工事中だったり、予想時間の2倍は覚悟して走るのだが、タンザニアに入ってからは格段にスムースになった。路面の状態がとても日本の舗装に近いの だ。(一部は日本の援助らしい)
 フロントグラスからのぞく正面の景色は、遠くの地平線から手前の空にかけて浮かぶ白い入道雲。左右に流れる景色は、どこまでも広く海のように続く原野。走っても走ってもタンザニアの風景だった。
 しかしながら、この地球上どこに行っても、どんな所にも人の生活がある。山の麓、水辺には人の家が建ち、畑にはくわを持ち、種をまき、収穫する人々の姿がある―――万国共通の風景である。夜が明け、陽が昇り、 陽が沈み、そして1日が終わる。その繰り返しの中に一人一人の生活と人生がある。アフリカにはそのような人間の営みの原点と、明快な姿があるような気がする。
 走りやすい快適な国道が続いて、夕方目的地のUyoleに着いた。本日の走行334キロ。
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