ID : 8763
公開日 : 2008年 9月10日
タイトル
化石化した森に地球温暖化の痕跡
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新聞名
ナショナルジオグラフィック
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元URL.
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=71785942
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元urltop:
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写真:
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アメリカ中西部の地下で化石化した熱帯雨林が発見された。この広大な熱帯雨林は3億年以上前の地球温暖化で荒廃したとみられている。
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発見された場所はイリノイ州東部の炭坑で、100平方キロに及ぶ巨大な森林をはじめ、5つの熱帯雨林が眠っていたという。今回の調査を実施した国際的な研究チームは、2007年にもイリノイ州ダンビル付近で10平方
キロにわたる化石化した森を見つけている。
これら6つの森は、いずれも石炭紀(3億5900万年~2億9900万年前)終焉期にあたる約200万年の期間のものと考えられている。
研究チームのリーダーで、イギリスにあるブリストル大学のハワード・ファルコン・ラング氏によると、「これらの森は地球の歴史上、最も初期の熱帯雨林で、激しい地球温暖化の前後に存在したものだ。6つの森は時代
順に上下に積み重なっていると推定される。そのうち3つは温暖化以前、残りの3つは以後のものなので、各層を比較すれば温暖化の影響を調べられる。当時の地球は、極地が広大な氷で覆われた状態から、温室効果で
完全に氷が消失した状態になるという急激な変化を経験している。見つかった植物の化石からも、最大40メートル級の樹木が密集していた状況から、10メートル程度の木生シダ類が多くを占める状況への劇的な変化を
確認できる」とのことだ。
もっとも、「この変化がどの程度のスピードで進んだのかはいまのところ不明で、10年単位だったのか、100年、あるいは1000年単位だったのかを特定するには、さらなる調査が必要だ」と同氏は続ける。「このほかに
も、化石からは二酸化炭素量を検出できるので、二酸化炭素の増加が地球温暖化を促進していたのかどうか、その影響が現在の状況と同じかどうかも調査したい」と同氏は語る。
発見されたイリノイ州の熱帯雨林は、太古の海水で保護された状態だった。おそらくは巨大地震などによって海水に覆われたとみられている。
現時点で、この化石のジャングルから見つかった動物の化石はほんのわずかにすぎない。「動物は植物とは化石化する条件が異なるためだ」と同研究チームは説明している。
しかし昆虫の化石だけは例外で、いたるところで発見されている。この石炭紀の森は巨大な虫に支配されていたようで、体長2メートルもあるムカデや、体長1メートルほどの巨大ゴキブリ、巨大サソリなどが見つかって
いる。
森の下には石灰層があり、ファルコン・ラング氏は「当時、泥炭地だったこの層が森を支えていた」と話している。
イギリスにあるリーズ大学の古気候学者ジェーン・フランシス氏によると、「植物が3億年前の温暖化に適応した証拠はほかにも発見されていて、この研究もそれに合致する」という。同氏は、「石炭紀の大陸や海洋の地
形は現在とかなり異なっていて、気候変動の規模も非常に大きかったので、その影響をいまの地球温暖化にそのまま当てはめるわけにはいかない。とはいえ、現在の気候もこの100年でどう変わるか分からないのだから
、調査する価値はあるだろう」と述べている。
Photo by Howard Falcon-Lang