ID : 8458
公開日 : 2008年 8月 3日
タイトル
専門家の中にバイオ燃料を放棄すべきでないとの声
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新聞名
JanJan
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元URL.
http://www.news.janjan.jp/world/0808/0808033613/1.php
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元urltop:
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写真:
イラストが説明として掲載されていました
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日本は、7月7-9日のG8サミットにおいて燃料電池車両を使用。各国が、気候変動対策としてのバイオ燃料を再検討するよう望んでいる。世界は、石油価格高騰の圧力をかわそうと、バイオ燃料に移行して
いる。しかし、これに反対する人々は、バイオ燃料は温室ガスを軽減するどころか増加させると主張する。
【東京IPS=キャサリン・マキノ、7月4日】
日本は、7月7-9日の G8サミットにおいて燃料電池車両を使用。各国が、気候変動対策としてのバイオ燃料を再検討するよう望んでいる。これらの車両は、世界の主要工業国首脳の会場移動に使用される。
ホンダはFX クラリティーおよびシビック・ハイブリッドを展示してその先端環境テクノロジーを発表する。両モデルの燃料は、藁を原料とする合成燃料である。
世界は、石油価格高騰の圧力をかわそうと、バイオ燃料に移行している。しかし、これに反対する人々は、バイオ燃料は温室ガスを軽減するどころか増加させると主張する。バイオ燃料の材料作付けのため自然林を
伐採することは二酸化炭素(CO2)の排出増加に繋がり、食糧作物の燃料転用は世界の食糧供給に悪影響を与えるというのだ。
しかし、皆がこの意見に賛成している訳ではない。アジア・リソース・パートナーズKKの最高財務責任者マイク・テイラー氏は、「バイオ燃料が食糧危機の原因だと責めていては、世界の政策決定者が根本問題を見過ご
すことになる。根本問題、それは化石燃料使用および地球温暖化の急激な上昇をもたらす地球人口の増加である」と語る。
同氏はIPSに対し、「解決は簡単などとい言うつもりはないが、要は、経済の基本である需要と供給の関係になる。世界の化石燃料の供給は有限だ。限りある天然資源の供給と需要の増加が合わされば価格は常に上が
るものだ」と語った。
また、「様々な種類のバイオ燃料があるので、すべてが悪いあるいは全てが温室ガスを増加させるとするのは誤りだ。(しかし)化石燃料の使用削減のため、一部のバイオ燃料技術を改善する必要があるのも事実だ」
と語った。
燃料生産を行っているインドネシアのヤシ油業界が、その一例だ。インドネシア・ヤシ油委員会(IPOC)は、そのパンフレットの中で、「熱帯雨林と比較し、ヤシ・プランテーションは、より多くの二酸化炭素を吸収しより多
くの酸素を排出するなど、環境に益する幾つかの利点を有する」と説明している。
一部科学者はこの主張に異論を唱えている。しかし、テイラー氏によれば、問題の本質は、二酸化炭素排出とヤシ・プランテーションからの酸素放出のバランスの問題ではなく、原生熱帯林の破壊とヤシ・プランテーシ
ョン建設で失われる原生林の生態系であるという。
バイオ燃料技術は産まれたばかりであり、効果向上のための更なる研究と投資が必要と同氏は言う。
国際食糧農業貿易協議会の白岩宏理事もバイオ燃料は解決に繋がるとの意見である。
「我々はそれが特定基準に従い持続可能と判断される限りバイオ燃料を排除すべきでない。最終決定を下す前により慎重なアセスメントが必要だ」と同氏は言う。
白川氏によれば、バイオ燃料は生贄にされたという。同氏はIPSに対し「政治家、政府は過去数十年に亘り、農業、地方開発への継続的投資促進を別にしてきた無能と怠慢を隠すため、責任転嫁が必要だったのだ。農業
セクターに十分な投資、特に技術開発、インフラ、拡張サービスがなされていれば、食糧安全保障に問題はなかっただろう」と語った。
白岩氏は、更なる土地開発も必要という。例えば、作付面積の制限により、米国では既に余剰農地はないという。
「私は、各国が農業作物などの原料の有用度に基づいたバイオ燃料生産の数値目標を設定すべきと考える。米国でさえ、バイオ燃料の第1世代ではガソリンに代替可能な僅かな量のバイオ燃料しか供給できないこと
を認識することが重要である」と白岩氏は語る。
第1世代のバイオ燃料技術は、石油などの化石燃料とコストの面で太刀打ちできないことから制約を受け、温室ガス排出抑制に果たす役割は限られている。
バイオ燃料技術第2世代は、食用部分を取り出した後の茎、葉、殻といった農作物残留物および穀草類ならびにウッドチップやジュースの搾りかすなど食糧にならない産業残留物を使用したバイオ燃料の増産を目指し
ている。
しかし、この第2世代技術はすぐには登場しそうもない。
国際農業開発基金(IFAD)のファルハナ・ハク・ラーマン氏によれば、世界の農村地帯には、散在する4億5000万の零細自作農地を生活の拠り所としている20億の人々が居住しており、これらは総じて経済的に危う
い忘れられた地域であるという。
同氏は、状況の深刻さを軽く見るべきではないと言う。気候変動により2020年までに新たに約5000万の人々が飢餓に晒されることになると予測されている。
ラーマン氏は、「バイオ燃料はいまだ気候変動対策の重要手段と見られているが、農地獲得競争の激化や食糧価格高騰の引き金となるだろう。同時に、離島でも育つサトウモロコシやヤトロファ・カルカス(ナンヨウア
ブラギリ)といった第2世代バイオ燃料原料が零細農家の新たな収入源となるかも知れない。国際努力は、これらのリスクを最小限に抑えると共にバイオ燃料に伴う機会の拡大に焦点を合わせる必要がある」と語る。
一方、燃料電池仕様車をグローバル規模で大量導入するには時間がかかる。
白岩氏は、「専門家の予測では、今世紀末には太陽、モデム・バイオマス、天然ガス、石油、水力といったエネルギー資源の様々な配合が可能になるだろう。環境および持続性にとって最善の策である再生可能エネル
ギーの促進が必要だ。この意味で、我々はバイオ燃料第1世代を排除すべきでない。何故なら第2世代バイオ燃料の画期的技術完成までになお時間を要するからだ」と語った。