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ID : 7915
公開日 : 2008年 6月11日
タイトル
森林火災により東アジアを覆った春霞
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新聞名
EORC
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元URL.
http://www.eorc.jaxa.jp/imgdata/topics/2008/tp080611.html
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元urltop:
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写真:
  複数の写真が掲載されていました
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今年(2008年)の冬、中国南東部を大寒波が襲いました。2月7日の旧正月の春節を前に、鉄道など交通網が麻痺し、中国出稼ぎ労働者の帰省の足が奪われたことは記憶に新しいところです。 
 図1は、NASAの地球観測衛星Terraに搭載されている中分解能光学センサ(MODIS)のデータから作成した今年1月下旬(観測期間:1月17日-2月1日)の東アジア域の積雪分布を示しています(白い部分が積雪域、緑色は 雪のない陸域、青色は海域、水色は海氷域、そして黒色は観測期間中ずっと曇っていた領域を表しています。また国境線を橙色の線で示しています)。
 この時期、中国では、西安から上海にかけての広い範囲で積雪域が広がっていることが分かります。このように、今年は1月下旬から2月上旬にかけて、一時的に大寒波が中央アジアから東アジア域を襲いました※。
 図2は、図1に見えている東アジア域での近年の積雪面積の推移を表しています。この図からも、今年1月下旬の積雪面積が、2000年以降では最大の面積にまで急拡大していたことが分かります。しかし、2月中旬以降は 、南からの暖気流入によって気温が急上昇したため、積雪域も急速に縮小しました。その結果、東アジア域における3月から4月にかけての積雪域は、逆に過去9年間で最も小さい面積を記録しました。
図3 東アジアの積雪分布(2000-2008年、3月22日-4月6日)
 図3は、3月下旬頃(図2の点線で囲まれた観測期間:3月22日- 4月6日)の東アジア域の積雪分布を、2000年から2008年まで9年間分並べたものです。今年の積雪分布を見ると、ロシアと中国との国境付近には積雪域が少なく、早めに雪がなくなったことが分かります。今年と同じような 状況は、2002年と2003年にも見られていますが、どちらの年もこの地域で森林火災が頻発した年になりました。
図4 Aqua/MODISが捉えた東アジア域の異常高温域分布(赤点、2008年4月26日)
 図4は、NASAの地球観測衛星Aqua搭載の中分解能光学センサ(MODIS)が2008年4月26日に捉えた東アジア域の画像です。赤外域チャンネルの輝度を用いて推定した火災域(異常高温域として抽出)の場所を赤点で重 ねて表示しています。雪が少なかった2002、2003年と同様に、今年も、ロシアと中国の国境沿いの地域で多数の火災が発生していることが分かります。急速に積雪が融けてなくなったことから、大地が乾燥し、森林が燃 えやすい状況になっていたと推測されます。この時期、おおよそ北西から南東に風が吹いており、風に乗って火災の煙が朝鮮半島や樺太、北日本に流れてきている様子が分かります。
図5 Aqua/MODISによるエアロゾル指数 ((a) 2007年4月23-30日(図左)、(b) 2008年4月22-29日(図右))
 図5は、MODISデータを解析して得られた2007年と2008年の4月下旬のエアロゾル(大気に浮遊する微粒子)の分布です。青色の地域ではエアロゾルが少なく、赤色では多くなることを示しています。2008年は図3の積 雪分布から予想されたように、例年より早く雪が融けたことにより、森林火災とそれに伴う煙(エアロゾル)が多量に発生し、北日本にいたる広い範囲に流れてきていたことが分かります。 一方、2007年は、積雪が多く火災が発生しにくかったため、エアロゾルの量も少なかったと考えられます。
 このように、春先の積雪の融解・消失が早まると、森林火災を誘発し、大気中に大量の二酸化炭素等の温室効果ガスやエアロゾルが排出されます。これらの大気汚染物質は、地球の温暖化へ影響を及ぼすだけでなく、 日本を含む広範囲の人々の健康へも悪影響を及ぼすことが懸念されています。
 JAXAではこれからも衛星観測を通じて地球環境変動の監視を行っていきます。
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